あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

『パリのアメリカ人 』

劇団四季 @シアターオーブ

 

友人のお嬢さんが急にNY出張になり、代打で観てきました。

えーと、第一幕は惨劇な出来(苦笑)で、第二幕は極上!って感じでしょうか。

(念のために書くけど、ハリウッド全盛期の、野心的(たぶん当時としては)な、ロマンティック・ミュージカル・コメディ映画のリメイク舞台版です)

 

四季はオケピット(生演奏)を使わないんだし、今後のミュージカルが映像重視で、装置のボリュームはマイナスに向かうのなら、オーブという劇場、似合うんじゃないかな。と感じます。

なによりもウチから近いし!

 

モダンバレエの群舞が圧巻でした。そっか、こういうのが得意な劇団に育った!ってことなのね。

重唱もステキ。訳詞はさすがの知伽江さんだし。聴いてて心地いいです。

映画版のコンセプトを踏まえた、パステルタッチと印象派風とキュビズム系の美術(映像の使い方がいやみじゃない!)がステキでした。

あと、ガーシュイン! やっぱすごいな! そして演奏音源もステキ録音!! (が、できればやっぱ、生オケで聴きたい! 3000円くらい料金上乗せの回、つくればいいんじゃないの?)

 

 

惨劇という言い方をしたのは、台詞の「質感」が、まるでないからです。結果、ロマンティック・コメディが成立してない。その言葉が、このシーンが、何を意味するかわかってる?と、別の意味で笑いそうになったよ。(いじわるですね、わたし)

お客さまを楽しませようとしゃべってない。

客席の反応を、楽しんでないでしょ。客席の全員を巻き込んでの、一緒の世界(気持ち)にいない。世界へと案内してない。

ま、ね。

なんで笑わない? なんで手ごたえないのかな?みたいな顔をチョットしてたので、自分たちでもわかってるんだよね、とは思う。(この時点で、気持ちを置く場所が、すでにズレてるわけだが)

 

わたしはね、「役者たちが、言われた通りのことしか消化してないなぁ」という印象でしたが、友人は「みんな、何をすればいいのか、わからなくて、迷ってる」印象だったそうです。

 

女優さんは、玲子さんというリーディング・アクトレスがいる(いた?)せいか、まだマシなんだ。男性陣がなぁ。

以前、浅利事務所旗揚げの『オンディーヌ』を観たときのハンス。田邊真也さんっておっしゃったかな。劇団に、台詞術を持ってる役者さんはいるんだし。

みんな、ちゃんと、盗め!

 

 

 

味方隆司さん、本役以上に、デパートシーンで脇役やってるときのが本領発揮ですね。デビュー(『ハンス』の郵便屋さんであってる?)のときから、群衆の中で悪目立ちすることなく「いいキャラだった、あれは誰?」となる方なんです。ほかに類がないタイプの役者さん。

本日の出演者ボードの前で「知ってるのアジくんだけだなぁ」と友人に言ってたら、後ろで「アジくんって呼ばれてんだね」とか声がしてて、すみません、わたしの中で時計の空白が長いんですとか、チラと思う。

 

マイロ役の宮田愛さん。前にもこの、お名まえの字面をチェックした感覚があるなぁと言ったら、友人がエスメラルダじゃない?と言う。わたしが好きな系オーラをもってらっしゃるのかな? おばちゃんは、ちゃんと名まえを覚えなくてごめんね、とか。

アダム役の斎藤洋一郎さんも、です。

 

リズ役の石橋杏実さん、すばらしい表現力の、バレエダンサーさんでした。こういう人材が四季には流れてくるのが、強みなんだわ。

 

ジェリー役の酒井大さん。ちょっと辛口なこと書くけど、ごめんね。

2幕後半の大ナンバー終わったあとの「からだ」。あの状態で舞台全編を演じられたら、たぶんステキよ。

 

 

ただ、この舞台ではね。ジェリーとアダムとアンリ、男子3人のボリュームがまるで同じだったことが、ストーリィをスリリングにしてた良さはありました。映画だとジェリー/ジーン・ケリーが恋の勝者になるのがお約束!としか見られなかったから。

こはちょっと、大切ではあった。

 

 

この辺とか、ほかのアレ?と感じた箇所。テキストが現台風に書き換えられたってこと?を確認するために、今度映画を借りて観なきゃ、です。

観たの、高校生の頃か?(すでに古典でした) えーと、こういうお話だったっけ? こんな、アメリカ人に辛辣な価値感だった?(古きを大切にするフランスに口出し無用!みたいな色合いが漂う箇所がある)

 

 

ただね、やっぱ、あのナンバーだけはなぁ。

原作に忠実なんだと思うが、大好きな女の子を自分色に染めたい!って強引さを歌い上げられても、面喰ってしまうのがご時勢よ。

こここここれはっ、どう捉えよう?と拍手しそびれてたら、となりで友人も固まってたので、単純にハッピー♪と受け取れない、今どきの女性は、残るんじゃないかしら。

 

好きなんだから許されるでしょと、相手を無視する。そういうのを受け入れられる女子、憧れる女子、今の時代にいるかしら。

という世界観にノレなかったのが、歌のテーマのせいか、単に演じ手の気持ちのせいかは、判断に迷う。(たとえば、うりゃいけんちゃんあたりが無邪気に歌ったら、また印象が変わるかもしれない?)

 

 

 

さて。チケット、買ってなかったわたしが言うのもアレですが、

迷ってるのなら観たほうがいいヨ!な舞台です。

 

 

 

最後に。

劇団四季は今後大丈夫なの?と、ときどき訊かれますが、わたしは大丈夫ですよと応えてます。

社長の吉田くん。25年前に一度、一緒に仕事しただけしか存じ上げませんが、ちゃんと劇団をつなげていける人材です、ってね。

期待してます!