あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

『ノートルダムの鐘』

観た芝居の感想をブログに書きづらくなったのは、今の時代、正直に辛口なことを書いたのが勝手に無責任な一人歩きをする可能性が怖いのもあります。

f:id:atelier-agen:20170401124210j:plain

今回も、この写真を貼るだけでタイトルはぼかそうかと思ってたけど。誠実に立ち向かう気持ちで、書く。

 

終演後に人待ちでポスターを眺めていたら、「ビクトル・ユゴーのノベルとディズニーフィルムをベースにした」という一行に気づきました。なるほど。ミュージカルの舞台版は、そこからさらに進化して第三の新しいアートとして立ち上がっています。

ネタばれにならないように書くと、日本語訳のタイトルからはずされている『せむし男』の部分の解釈の比重が大きく、そこが肝心で、感動的なのです。

パフォーマンスアートの威力を存分に発揮した演出になっている(そして音響効果で計画的に補強されている)のですが、そこに泣かされて、観終わったわたしが最初に叫んだ言葉が「あのシーンはズルイ!」 友人苦笑。

ところでわたしは演出家の持つメッセージに泣かされたのであって、役者のからだに感動したわけじゃないからね。演じる側はそこを勘違いしてほしくないです。

 

聞きかじった情報によると、作曲家さんの息子さんが演出されているそうです。全編、実に演劇的でシックな発想がステキ。日本の演劇でいったら野田さんえりさん好みの、そぎ落とされた見立てや切り替えの多用。

そしてストーリーとは別に、社会に、人としてのあり方に、演劇レベルの深いメッセージを発信しているという意味で、これもまた新しいジャンルの社会派ミュージカルになっています。(『貴婦人の訪問』など、わたしは社会派のダークファンタジーという新しいジャンルの台頭を感じていますよ)

説明台詞が多いのは、子どもたちに対する親切だと解釈しました。この方法論がありなのかありえないのかは、ただいま検討中。なにしろ昨日の舞台では役者たちの処理が下手すぎて、判断しかねる。――

 

 

ほんとにね。わたしは観劇中ずっと、お願いだからわたしを感動させて! この素晴らしい世界感にちゃんと引き込んで! 連れていって! と心の声で叫んでました。

自分の中で、ほんとうはここでこういう効果が発現するはず! だからそこはぁ! とか翻訳しながら、観てたの。

 

だから、とても残念でならない。

 

ダブル主演(って言い方でいいんだよね?)のカジモドとフロローが役割を果たしているから、舞台は成立しているけれど。

あとは、歌と舞台機構だけは超ハイレベルな学芸会か!と毒づきたい。

なによりもクワイアの上手半分! プレスコ頼みのやる気のないお飾りは全とっかえして。

 

 

劇団四季の台詞術は、不器用に朴訥に透明に積み上げていく先に言霊が降りてくるという醍醐味が目標のはずなのに、

みなさん、なんか妙な節回しというか、思い違いの暗闇にはまり込んでいますよ。思い違いに「これならとりあえず文句ないでしょ」レベルな満足をしているから、始末が悪い。

 

この劇団には今、リーディングアクター(もしくは理論)がいないんだな。と思う。

それは退団した役者を呼び戻せば復活する問題ではなく、半分は解決するかもしれないけれど、平成が終わろうとする今、台詞術の進歩は飛躍しているのに、誰もその勉強をしていないんだろうね。

役者たちがその迷路に陥っている責任がどこにあるかはともかく、劇団ぐるみで早く気づいて、勉強してほしいです。

 

日本の若い演出家を外から招いて、どれだけ任せられるか、なのかな。ほんとに、ちょっとした呼吸や気づきの問題なんだ。

 

 

 

さて、

わたしが観たかったのは、フロローを演じる友人マッシュの晴れ姿でした☆ 役作りの混迷も含めて、かっこよかった。かれの人間性が、フロローに幅のある深みを与えかけていました。この役は伸びしろがたくさんあるので、今後も期待だわ。

そして、なにがかっちょいい♪って、地毛の半白髪で勝負に出てるとこですよ。(あとからわたしをみて、そういえば同じくらいのお揃いだなw)わたしたちの世代って、ありのままにナンタラと歌うのが流行りながらも、ほぼ髪を染めてるからね。心意気って言いたいわ。

ちなみにフロローの最後は、初演の『レ・ミゼラブル』の「ジャベールの最後」に匹敵するシーンです。おおー。

  

カジモドは田中彰孝さんという方でした。イメージを裏切らない役づくり。かすれてさえ魅力になる声と、せつなさをやどしたからだがよかったです。

 

 

 

チケット取りづらいみたいだけど、来年はKAATで演るようだし、

演劇関係者のみなさん、一度観てね。