10代の頃、古い映画をひととおり観ておくことが教養の一部であると思っていた。
その中で出会ったキリストの生涯を扱ったどの作品かで(つまりタイトル忘れました)、ゲッセマネのシーンと出会った。それまで読んでいた児童向けの聖書物語的な本には出てこないシーンに、わたしは撃ち抜かれた。
金髪でハンサム(つまりアメリカ映画であったことは間違いない)なキリストが、自分の弱さと向き合い苦しむ。最後には重い運命を受け入れる。
生きることがわけもなく辛く苦しいとき、そのシーンはわたしに寄り添ってくれることを知った。苦い毒の盃を飲む。それだけならできるだろうと。(クリスチャンだったことはありません。教養としての知識とキャラへの共感です)
劇団四季のミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』と出会ったのは、美大受験の忙しさを縫っての高二の冬。鹿賀さん(退団されるまで出待ちファンでした)のゲッセマネは、ジーザスの苦しみを身近なものにと引き寄せてくれた。なにしろジーザスから素に戻った鹿賀さんは、楽屋口でわたしと言葉を交わしてくださったので。「今日はあのへんの席だった?」「は、はいっ~」
そして。
多感なお年頃ゆえに眠れない夜、泣きながら小声で歌詞をつぶやくことで、わたしはずいぶんと救われたのよ。
鹿賀さんの退団後、ジーザスを引き継いだのが祐一郎さんだった。サーファージーザスと姉さんマリア(久野さんでした)だね、とか陰で友人と言っていた。ちなみにチケットを取ってくださった役者さんの楽屋にご挨拶にいったついでに、デビュー一週間のサインをもらってるので、生意気盛りの大学生が一応納得できたジーザス/ゲッセマネだったのかなと思う。
その後、公演を重ねるうちに、祐一郎さんのゲッセマネは化けていった。
歌声に圧倒・支配される客席で、どんな波長があってしまったのかわからないけれど、苦悩の向こうに、宇宙を感じたり、侵食し伸び続ける植物がみえたり、した。生きづらさが生きづらいまま解放される感じだった。(わたしには、ね)
というわけで、ミュージカルのあなたのナンバーワン曲は?と問われて、「祐一郎さんのゲッセマネ」と答えた記憶がある。確か「笑って死んでいける気がする」と、オヒレをつけた。
帝劇トークショー『マイストーリー 素敵な仲間たち』で、アッキーさんに乞われて祐一郎さんが一節を口ずさんだとき。
一瞬、めまいがした。アレ、これを聴いちゃったら、わたしはいつ死んでもいいですってことになっちゃうの?
でもチョット違った。
東宝の舞台だったので、口ずさんだのは英語の歌詞だった。耳になじんでいる四季のもったりとした日本語の歌詞ではない。
懐かしくて、新しかった。
何倍もの情報(英語と日本語の差)が、透明な音質でさらさらと立ち上り、新しく大きく花が開くのを見る想いだった。
祐一郎さんご自身の内面も、こんなにこんなに変わったのね。(そりゃねえ)
ってか、ふつーに英語の歌詞を入れて、ちゃんと解釈つけて、消化してるの。うわ。
うわあ~~ (ハートマークいっぱい)
うしろ向きでこそこそと口ずさまれたゲッセマネ。(←たぶん版権の問題?)
歌が生まれ変わっていたことに感動する。
アートに最終形態なんて、ないんだなあと思う。空間と時間のアートとして、一曲の歌も、新しい切り口で変わり続ける。花開く。
というわけで、ミュージカルのあなたのナンバーワン曲は?と問われて、「祐一郎さんのゲッセマネ」と答えるまでは変わらないけれど、
内容は書き換えられてしまったのよ。というお話。
いつかちゃんと聴けますように、の願いを込めて。うん。今度はそれを聴くまでは、死ネナイ。
あの場で唐突に、歌って!と言ってくださったアッキーさん。感謝です。ありがとうございました☆
でまぁ、ついでに、ロンドン公演をいろいろと懐かしく思い出した。
初日はまだ友人たちとウィンダミアにいたんだっけか、わたし?とか。
チケットトラブルで、裏に回って営業のコを呼び出して対応してもらったけど、申し訳ないほどトラブル続きの中で大変だったらしいと後から知ったんだっけ。あれ、あとからちゃんと謝ったかしら?とか。
ロビーでボスとすれ違ったとき、ご挨拶したけどほぼ素通りされた?と思ったら、二度見されてから、改めて無視されて。次の日、公園を散歩してたらわしゃわしゃと胸騒ぎに支配されて、で、あとから、え。まさか、そのシワヨセ? なエピソードを聞いて。んなこともあったよなあ、とかw
この公演は、ロンドンの新聞の一コマまんがのネタにもされた。十字架にかかったジーザスが、花魁道中のヘロデを見下ろし、「下ろせ、あっちの役をやる!」とか叫んでるの。
なにこれ、イギリスの新聞、意識レベル低っ!と言ったら、年上の友人に、新聞まんがのネタにされること自体がどれだけすごいか、そっちでしょうと言われたなあ。
■今、見られる『JC=S』リスト
↓↓ 演出はこれがおすすめかなあ。ただし日本語字幕に非難轟々らしいですw
↓↓ アリスクーパーのヘロデが(わたしたちの世代には)話題でした。
↓↓ テレビ用に収録。英語ではこんな歌詞だったんだと知ったのがこれ。
↓↓ 最初の映画は、曲と曲のつなぎが無神経だった記憶が。高校生のとき以来見ていないけどw ストップモーションがかっこいいか、わざとらしいかで友人ともめた。ジーザス役のテッド・二―リーは、自分に務まるかずっと不安だったけれど、待ち時間に知らない子どもがおずおずと衣裳に触ってきて、自信が持てたってエピソードが好き。
『ジーザス・クライスト=スーパースター』の、ナカグロ(・)でなくイコール(=)にこだわったのは、劇団四季の解釈なのかしら。
↓↓ で、中学生の頃みたの、たぶんこれだな。 違うかな。そんでそのあと、他の映画でジェフリー・ハンターみて、俗っぽさにがっかりしたような気がする。それから、ほかのキリストの生涯の映画では黒髪ジーザスで、そっか民族的に金髪なわけないよね~ と、ため息。観てる時は抵抗なかったんだけど。