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栗原英雄の運命を変えた(!)ミュージカル。再演の折はぜひ拝見せねば!ということで。
うんうん。ミーハーな嫁を受け止める懐の深い旦那役(このご夫婦がコメディな差し色役)のクリ、ステキでした。メイン以外にも並行して何役かこなしてて、なるほど、そのシーンの群衆のカナメをきゅっと抑えてた。
それにしても、ずるい設定のミュージカルです。
いろいろな人たちが、それぞれの思いや希望を胸に、ただ乗船するというふつうの風景を描写してても、それ以外なんの説明してなくても、居合わせてる全員が「この船はやがて沈む」ことを実は知っているわけで。胸が痛い。
遅刻して船に乗り損ねた! 俺の人生は終わりだ!というキャラがひとり描かれるけど、いやいやあなたは助かったのよ!と、みんなで内心突っ込んでるわけだし。
そして淡々と進む時間が、凍てつくようなカウントダウンになる。
(あ。もしもあの有名すぎる映画をイメージされてる方がいらしたら、それとはまるで違う作品ですからと書いておきますね。描く見せ場が全然違うんです)
それにしても、現実のタイタニック号では、救助ボートに400席だかの空きがあったという情報には、驚きました。これは単なる手際の悪さなのか、男子が譲り合ってしまった結果なのか。
女・子どもを優先するという感覚も、日本人男子にはあそこまで徹底してあるかしら、とか、女子のほうも当然として甘受するかしらね、とかも、観劇後の友人らとの話題になり、
にしても、
男子でも、若い人とか幼子のいるパパとかを優先して乗せる感覚はなかったのかしら。とか、考えてしまうし。
船主が、真っ先に紛れ込んでボートに乗る様子が描写されるけれど、空席があったんなら生きることに執着する男子が乗ってても当然じゃない?と感じて。
幕切れでみんながさわやかに歌い上げる中に、生き延びた船主役の禅さんの超泣き顔がまじっているのが象徴的で。
十字架を背負って生き延びること。大切だと考えていいんじゃないかな。間違っていないと思うのよ。
あとね。
全編、全員の、のびやかな歌声がステキでした。うっとり。
さて、チケットを取ってもらったので、終演後は楽屋のクリにご挨拶しに行ったのですが、加藤くんや上口くんやお客の彼方くんなど、のっぽの美青年たちが行き交う空間が思いがけず楽しかったのでした。ふははは。