ある種の本、雰囲気とか文体に世界観がある場合なのかな。 それまで垂れ流すようにいろんな本を読み続けていたのを突然打ち止めにさせて、日常にふんわりと長い余韻を響かせてくれる。 上質な楽しさ、小説を読む喜び。
洗練と荒唐無稽、緻密といい加減、男のオチャメと意気が同居していて、作家のくすくす笑いがチシャ猫みたいに行間に織り込まれているような。
で、
緻密な構成なのに、無神経な矛盾(猫の記述や道筋の確認)や事実との違和感(夢野久作はこんなことは言わないでしょう)がところどころあって、なんで編集や友人のチェックが入らなかったのかな?と、読後しばらく考えていた。
イヤラシイくらい細かいトコなんだけれどね。 でも、なあ。
作家としての新人時代がなかっただろうから。 デビューした次点でマスコミ界の超大物だったわけだから、編集は恐れ多くて矛盾を指摘できなかった?と考える。 だとしたら、不幸だったね。
次に思いついたのは、モチーフである江戸川乱歩本人の作品が持つ、いい加減さ。 おもしろければ矛盾なんかへっちゃらさ!みたいな、あの書き飛ばされた勢いを大切にしたような作風を。 あえて使ったんだとしたら、スゴイことだが。 ……これは考えすぎか。
いや、どうなのか? ? ?
一番ありそうなのは、まあ、いいんじゃないんですか? 自分が書きたかったのはソコじゃないですから(笑)。 というような、演じられた蛮カラ。
いや、とにかく。
なんともステキな本でした。
つけたし。
読後、頭で考える道筋が少し推理小説めいていたようで。
1か月間、いくら家捜ししてもみつからなかったモノの在り処の視点がふと、切り替わる。
ああー、まさか! (トイレを飛び出す) ……あ、あったぁ! 感涙。
ありがとう、久世サン!