あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

『三銃士』とその周辺

2011.8.19. 14時過ぎの地震のとき、帝劇の客席にいました。

世界が 揺れっ として、周囲も声にならない あっ という空気が揺れ、わたしも口の形だけ あっ となりましたが、
目の前の舞台では三人の女優さんがそのまま歌い続けていらして、
あとは舞台監督さんの判断することだな、と、わたしもそのまま歌の世界に身をゆだねることにしました。 信頼、なんだと思う。

とても丁寧に、音質の差を意識しながら、注意深く重ねられてるハーモニーに。
捨てずに、頑張っているステキに、耳を傾けた。

震度3の地震にも騒がない、観る側、魅せる側。 それが今の東京の空気、です。

 

この日のわたしの興味のひとつに、
井上さんの魅力のバージョンアップはどこにある?という、実に不届きな(ホントすみません!)項目がありまして。
なんか、舞台の上ですごくいろいろと一生懸命に工夫されているのに、それがストレートに客席を突き動かさない、このもったいなさ感は何故なんだろうか、と。

これね、もう何年も感じてきてたことなので、
そろそろ、少なくともわたしの中で分析しておきたいかも、と。

からだの持っていき方に、無駄か不足かがあるんだろうな、というのは、なんとなく思うのだけれど。
たぶん、遊びとか、揺らぎとか、くずれとか、その辺???で、
わたしは、もう一味ほしいと感じるけれど、
でも、ファンの皆さんにすれば、
コレがいいのよ、壊さないでよ、なんだろうなあとか思いながら。

いろいろと考えたんだよ。
役者さんの体質は、いくつかに分類されるそうで、
主演タイプと、助演タイプと、コロスリーダーと、コロス(※)と、あと何だっけ?
WSでこれを習ったときは、ちゃんとタイプを見分けてキャスティングしないと舞台が難しいことになるって教えだったのだけれど、
祐一郎さんは、役やシーンにあわせて気配を使い分けてるみたいだし、
宝塚の生徒さんは、トップをめざして、それぞれのあり方を身につけられるのだろうし、

主演するときの、からだの持って生き方というか、客席の引きずり込み方というか、
その辺のコツみたいなものが、井上さんにはもう少し必要なんだろうか、とか。
瀬奈さん見てると、目かしら、視線の動かし方かしら、と思ったりするんだけど。

※ わかりやすいなーっ感じたのは、『レ・ミ』のマリウスの配役。 
  最初からマリウス役の人(助演タイプ)と、
  学生役からマリウス役になった人(コロスリーダータイプ)とでは、
  学生たちとの風景が違ってるの。 もちろんどっちが正解というのではなく、
  ま、あ。 これは演る側には全然関係がなくて、観る側の整理する視点だわね。

話を、この日の井上さんに戻して。
和音さんとのデュエットで、ん? なんか、うまい具合にヒビが入った?という印象で、
それが、終幕の想いへとつながり、

おおっ、目の前で、
わたしの長年の老婆心が、解決されていきました。 ステキ。

新しく必要だったのは、ご自分の感情を壊して投げ出すこと、役としての感情に(計算を超えて)支配されることだったのね。
――というわけで、
これから観ると、たぶんちょっと新しいダルタニャンが観られるはず?
(残念! もうチケットは持ってませんっ) 

 

三銃士の御三方に、ようやく端正な色気が出てきましたね。
今さらかよ〜とも思うけど、でもこれを観られてよかった!ということで。
前回、観たとき、んん、そっちの方向に流れるのか?と思ってた部分は、修正されてました。
というか、おとなは偉いね、と、観るたびに思います。
何をやっても、キチンと魅せてしまっているけれど、この懐の深さというか、引き出しの丁寧さは、ホント素晴らしいです。

って、具体的なことあげないと、全然説明にならないか。
ま、いっか。 それを説明してたら、大変なこと(超長文)になります。

 

で、まあ。 つくづく思ったのが、
この作品の台詞は、役者さんには難しいんだろうなあってことです。
ほぼ全部、説明台詞と言ってよさそうだ。 感情の襞々を語る台詞なんて、ないよね。(だから「歌」があるんだろうって?)
なんで今さら実感したかって、
舞台の前半が、台詞が流れてるなあー、もう少し言葉をタテた方がよくない?だったからで、
流れてても情報がキッチリ伝わってるからいいのかなあ、
でも、もったいないぞーって考え出して。

そしたら、
このミュージカルは「ミュージカル・ショー」であって「演劇」ではないから、これでいいのか?と考えが、流れた。
構成員は、ミュージカル俳優ではなく、ショーダンサー・ショーシンガー。
この辺は、割り切るところなのかな?

と、なると、
ミュージカルには大きくふたつのタイプがあり、それぞれは別物だともっと意識すべきなのかな、とか。
役者さんたちも、ふたつのタイプに分類されるのかな、となってきた。

  

最後に、
――今になって、ホント今になって、(だからっ もうチケットは持ってませんっ)
ご自分の中のMを消して、ドSな役作りをしてみたらおもしろいかも!って言葉が、浮かんできたよ〜 言っても、またスルーされるかもしれないけど〜 くそ〜 それでも、言ってみたかった〜 観たかった〜

あと、これは他の方々へ。
祐一郎さんね、自分のナンバーを歌う直前に、呼吸で客席を耕し?て、
自分が歌いやすい土壌に、歌の世界に持っていきやすい客席の空気を、作っていたよ。
(やり方は本人に聞いてね)
この日の発見、ってか、笑笑っ、露骨すぎ。 
ご参考までに。