あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

「ドン・ジョヴァンニ」を観た

        2008.3.3. 18・00〜 葛飾シンフォニーヒルズ アイリスホール

ケイちゃんが演出した芸大の3・4年生による学生オペラです。 全幕・原語上演。
楽しかったんだよ〜。 1日だけの公演なんて、もったいない。
モーツァルトの時代のオペラってあんなんだったんじゃないかと思う (って言ったら、ケイちゃんもうなずいてくれました)。
えっとね、猥雑さとか俗っぽさと、超上質との同居。 マリアージュ
が、しかし、
いろんな意味での挑戦で、本人はかなりテンパってたみたいです。 (ロビーですれ違っても表情なかったもんね)

平日の18時始まりナンテ、観に来るなって言ってるわけ?とか責めちゃいましたが。
ホールを借りる予算が1日だったら、3時間のオペラやって10時までに搬出してというぎりぎりの開演時間なわけです。
大遅刻だよぉと言ったら、始まって70分くらいに大きな見せ場があるからと慰められ、
ホールにたどり着いたのがまさに70分過ぎた頃。
案内係の方から立ち見ですがとすまなそうに言われ、ソプラノのアリアの間ロビーで待たされ、拍手にまぎれて客席に入ったらそのまま通路の角にぺったりと座ってしまいました。
(二幕では、前から2列めに空席がありましたと案内していただきました)

でもね、通路。 いい位置だったよ。 
そしてつまり、床に座ってオペラを観るってこと自体が楽しかったとも言えるの。
他だったら絶対にありえない。 けど、もしかしてこれが正しいオペラの見方?とか感じたりして。
だって床伝いに劇場と一緒に、音を共振できるんだもの。 そしてふぅと空気の振動との微妙なズレがわたしを幸せにする。 
で、座って、はあ〜と息をついたら、素人くさい不思議な行列がずらずらと舞台を横切り、

…………。

ケイちゃんてば、このオペラにどんな演出をつけたんだ?と。
(あれが70分過ぎの見せ場だったのか、訊くのを忘れたな)

装置、いい感じに持っていってた。
割と寸前まで、まだ決まらない〜と聞いてたので。 ちょっと感動。 
木枠の箱をごろんと転がしてるのが、ホールの壁や舞台上のグランドピアノといい相性になっている。
わぅ、スモーク。 やっぱ使うと照明が映えます。

そう、伴奏はピアノだけなのね。 
でも、だけでも充分なのは、たぶん歌手と指揮者の実力のおかげで。
ただしピアニストさんが一番の肉体労働だったと思う。(だって全曲をひとりでだよ!)

悪ふざけな振り付けがいっぱいしてあるのだけれど、
上級な歌唱(芸大生レベル高い!)と拙い演技(微笑)の中で、人物たちが舞台の上に存在するための愛嬌になっているナと思う。
ひとりひとりが、愛しくなってくるのね。
わたしはオペラをほぼ観たことがないから、けどエラそうに言ってしまうと、
新演出とか言いながら、無意味に奇をてらっているだけなんじゃない?と思うことが多い気がするのね。
でもケイちゃんの悪ふざけは、そのシーンの持つ意味、人物の気持ちに添っているから嫌な感じがしない。 
あ、悪ふざけって言い方は随分か。 ^_^)

あとね、
「ドン・ジョバァンニ」なんて、200年間やりつくされた作品なわけで、
演出家がいなくても、なくとなく過去の寄せ集めで舞台くらい作れるんじゃないの?とも思ってたのだが。 (すみません)
舞台の上の学生たちは、わたしの耳には完璧に近い出来で歌えるにもかかわらず、
その人物として感情豊かに歌えるにもかかわらず、
どこに立ってどう動けばいいのかは迷うみたいで。
演出家っていう交通整理の存在が、ひしひしと感じられたのも発見。

パンフにケイちゃんが、「じゃあ、やってみようか」と言うのが自分の役割だとか、書いていて。
そうだね、多くの日本人のスタンスは指示待ちなんだなと感じるこの頃のわたし。
動き出すためのひと押し、をする責任、の重さ、もちょっと感じた。

そうそう。 それからね。 残酷だなと思ったのは。
大学というのは、技術・勉強をトコトン極める、極められるところで。
学問とかはそれでいいのだけれど。
肉体表現には、……つまりルックスが関わってくる。
自分のビジュアルな見せ方。 と、限界。 それを超えた生かし方。
重要なことだけれど、学校では教えない。(たぶん)

まあ、……いいか。
社会に出て、残酷に塩もみされてください。 としか、オバサンには言えません。

そしてそして
ステキなのは、
隣の席の見知らぬおばさまが、カーテンコールの拍手をしながら、もう! うれしくて、誰かと話したくて、楽しさを分かち合いたくてたまらずに、
わたしに話しかけていらしたことでした。

いいなあ。 こういうオペラ。
東京のどこかでちんまりと、安価に毎日、こういう公演が打てるといいねえ。
お芸術なオペラでなく、ミュージカルでもなく、強いて言えば
「音楽劇」!

 

終演後、落ち合った ちょーふ が、
このホールのもぎりや案内の女の子たちのレベルが違う。 かわいい! とシキリに言う。
ははははは。

 

つけたし。
今、ケイちゃんとメールのやりとりしてて、ブログを書いてるところだよと言ったら、このページを教えてくれました。 ↓ ↓ ↓ 
http://yaplog.jp/son-net/