あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

ゴドーに迷いながら

かなり前にキッカケがあって、ベケットの『ゴドーを待ちながら』の写経(劇作家用語)を始めた。

あとで理由を書くけど、途中で長い中断があり、最近復活して、現在また手が止まっている。(ので、珍しくブログ書いてるw)

 

 

写経といっても、台詞をそのまま書き移すのではなく、脳内キャストによって現代の話言葉に変換され、その勢いを書き落とす。ト書きはママ。

 

ちなみに、日本語訳しかテキストとしていない。英語だとどういう言い回し? この単語と単語は同じじゃなくていいの?となっても、そもそも英語に昏いので。調べても、たかが知れてる。

 

 

さて。

めちゃくちゃ楽しいのは、写経することで、読んだだけではわからない、作家の意図がみえてくること。

 

日本では不条理劇として哲学性を評価されてたと思うけれど、実はベケットは、正統派演劇をいかに「壊すか」に心を砕いると感じた。

楽屋落ちネタが、すっごく多い。

で。たぶんそれが、今ここ(舞台上の世界観・リアルな板の上・人生の象徴など)にいる自分らの存在意義を、結果的には問うてくるから。深い哲学とも読める。

一方で、情に訴えかけるシーンや、詩的な美しさもあって。

 

何十年か前の上演版では、コントとして演じるべきだと解説されたのも、ようやく少しわかったかもしれない。や、だったらもっと、同じ地平線に降りた芝居をしたほうが、おもしろかったのでは?とか感じたりするけれど、まぁ、昔のこと過ぎて、言い切れないわw

 

とにかく、遊び場な作品だってことは、間違いない。

 

 

 

言語学の研究者でなく、劇作家の端くれが書き落とすので。

英語ではそうなのかもしれないけど、遊びたいのはそこではないのでは?がたくさんある。

たとえば、台詞に「イギリス人は」という箇所があるけれど、当時のアイルランド人にとっての「イギリス人」は、現在の日本人にとっての「イギリス人」とニュアンスが違うんじゃないの?と思うから。

とりあえず「山の手の人は」に置き換えてみる。たぶんこのシーンでゴンちゃんがうひひと笑いたかった感じに近づいた気がする。

 

そう。愛称は、ゴゴとディディではなく、ゴンちゃんとミルくん。

これはキャラたちが勝手にそう言い始めたのよw

 

 

さくりさくりと書き進めるうち、ポッツォとラッキーが出てきて、わけがわかんなくなってきた。ゴンちゃんやミルくんからみたかれらの社会的な立ち位置みたいのはわかるけど、全体がなんかしっくりとしない。

今の日本社会、格差があるといっても、一目でわかるとか、全員の意識下に根付いてるとかいうほどでなく、

ゴンちゃんやミルくんはたぶん、年老いた外国人労働者っぽいわけだけど、

え、ええー。

 

思いついたのは、ポッツォを女性にすることで。帽子を脱ぐシーンが気の毒だけど、スキンヘッドだったらこなせる女優さんいるかしら。。。とか。

ならばラッキーは若い男か。や、何十年のつきあいという台詞はあるけど、まあファンタジーな処理で?

 

 

と。無理やり、少しずつ書き進めてたけど、ラッキーの長台詞を前にして、完全に、動けなくなった。

ポッツォとラッキーは、なにを語りたいんだろう。わたしには見えていないバックボーンがありそうよ。

 

 

 

はい。仕事でも強制でもない、いわば自主練ですからね。作業は中断。

 

 

 

 

 

ある日、SNSで。

場所を高校の学内カースト(なるほど)に置き換え、ポッツォとラッキーは女子高生の設定とした高校演劇がある。と知り、(やだなに、めっちゃおもしろそう!)

 

そうか。ラッキーは負け組・文系女子かぁ。(←すでに勝手にイメージ)

 

 

ちょっと、自分の中が動いた。

 

 

けど、あの長台詞の処理がね。見えない。闇。

狂った知性。

過去観た舞台ではいつも、若い役者さんの超絶努力に対して、うれしくなって拍手するって捉え方だったけど。違うはず。

ゴンちゃんやミルくんは、うるさ~い! ぽかすか! だけど、

ポッツォにとっては、なんかもっと許しがたい成れの果てだったはずで。。。

 

 

えーと。

 

 

 

かくして作業は長いお休みに。

 

 

 

 

ん。ラップ調だったら?

 

 

もしくは、デスメタル???

 

 

 

 

 

なんとなく、腑に落ちた。

作業再開。これが二週間くらい前です。

長台詞も、それを前提にしたら書き換えられるようになり、格調は失せたけれど、繰り返されるエコーのような面白み、くだらなさが浮かんできた。

 

はぁ。

 

これは、こういう台詞だったのか。

 

 

 

そのあとは、めっちゃサクサクと進む。たぶん、ベケット自身も筆がのってたんだと思う。

 

 

 

で。

今度はどこでつまずいたのかって?

 

ゴンちゃんが叫んだ。「黙らせて! 少しくらいなら、なぐってでも」

(原文/黙らしちまえよ。横っつらを張ってやりゃいい)

ん?

だめじゃん。絶対。女子なぐったら。。。

 

 

え。どうする?

 

 

今の妥協案は「黙らせてよ!」だけにして、

ミルくんはポッツォをなぐらず、服をひっばる。とか。

 

 

まぁ。わたしの脳内で、ポッツォはゴスロリか姫系の、たっぷりして身動きとりづらい衣裳なので、成立は、する。

 

 

ん。これでよしとして、先にすすむか。

o(ΦωΦ)o

 

なう。