あとりえあげん

世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。 HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

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「あなたに不利な証拠として」を読んだ

            by ローリー・リン・ドラモンド 駒月雅子  /早川書房 ハヤカワ・ミステリ

「ANYTHING YOU SAY CAN AND WILL BE USED AGAINST YOU」    by LAURIE LYNN DRUMMOND  / HAPPER CILLINS PUBLISHERS

あげんのオススメ度  ☆☆☆☆★

最初から、別の話を。

ずっと以前、深夜TVで文化人たち(全員・男)が高野文子という非常に感覚的な作品を描くまんが家について、熱く語り合っていた。気持ちに嘘はないのだろうけれど、かの女の感覚的なまんがを「理解できる自分」たちに酔っていた、ところもあったらしい。(文化人ですもの) 話が盛り上がっているとき、アシスタントの女の子がつい、「そうそう、あの感じ、風みたいで、すごくよくわかりますよね〜」と相槌をうつと、一瞬、全員が固まった。TVなのに。名だたる文化人たちが。「え、あ、そうそう、あんな感じで」「そうそう」「そうそうそう」 不安なのか? 言葉で分析できない、わけのわからない、「女の生活感」。それを好きだと表明することで、自分は高尚な精神を理解していると周囲に自慢していたいのか? 男たちは、懸命に確認しあう。間違ってないよネ、ボクたち。そうそうそう、大丈夫だよネ。女の子はたったひとりで、きょとんとしている。

以来、女性作家について熱く語る男の評論は、半分疑った方がいいと思っていたのに。「読みながら何度も心が震えた」というキャッチコピーに、まんまとつかまってしまったのだった。何よ、うそつき、というのも違うか。「男」で「文化人」だから……。知らなかったのね。男社会で働く女たちは、多かれ少なかれ、みんな、こんなんなんだよ。だから、この本に出てくるアメリカ市警で働くかの女たちが特別なのでなく、今あなたの隣に居る女性たちも、淡々と仕事と私生活を正直にこなしながら、誰にもいえないストレスを抱えていると気づいて。そのとき初めて、心が震えるはず。

心が震えはしないけれど、たくさんのため息が出た。アメリカで制服警官を務めるということは、腐乱死体も死にかけている人間も、狂人も銃も、そして自分が人を殺すことも、こんなにもごく身近であるのか。母性を含む女の感性にはずっしりと重い。それは女の内側へ内側へと沈殿していく。

自分を受け止めるのは、結局、自分しかいない。起こってしまったことを、死ぬまで自分に問い続けることでしかない。だけど、恋人や家族や友人が助けてくれる。

(表題は、犯人逮捕の際に告知される「ミランダ警告」から)