あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

拍手

過去、劇場で1年ほどバイトをしたせいか、客席での拍手が、なんというのか、人より雄弁だったりする。 全客席の拍手をひっぱって、舞台を波に乗せたりもできる。 今は絶対にしない。 観客にも役者にも、舞台の神様にも失礼なので。

 

一回の拍手で、舞台を壊したことがある……。昔むかし、2人のダンサーのコラボだった。

舞台があまりにステキだったので、次の日も観にいった。 若い方のダンサーが、客を少しイジるシーン、その日の客は上出来な反応をしたので、わたしは間髪をいれずに拍手した。 舞台のそのシーンを壊したわけじゃない。 だがそのとき、2階のわたしから1階の客席がゆらっと震えるのが見えた。 しまったと思った。 もうひとりのダンサーのファンのライバル心に火をつけてしまったらしい。 
過剰反応が始まった。 すると、アドリブを得意とする年上のダンサーが、それに反応してしまった。 受けを狙ったあざとい仕草が展開する。
ついには、
前日には荘厳で美しかったエンディングが、……ギャグになってしまった。

舞台空間を演者と観客が作るのなら、後半が前日とまるで違う作品になってしまったことも、舞台のひとつの形として受け入れられるべきなのかもしれない。 だがわたしは、淡々と、前日と同じに踊り続けた若い方のダンサーに、申し訳ないと思った。 少なくとも、わたしの好みの仕上がりではなくなってしまった。 受けだけを狙った小手先の動作はキラいだ。 結果として、まず肝心な主題そのものが雑になるので。

演者にとって、拍手と笑いは麻薬なのだろう。 もっともっとと欲しがって、肝心なことが雑になっても、客席がウケていれば思い違いは深まっていく……。

 

それで、いいの?