あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

「レ・ミゼラブル」を観た

                  2007/7/19 18・15〜 / 帝国劇場

「開演しちゃったなあ」と思ったときは、まだ会社にいた。 これは仕方がない。 
それから急ぎ足で劇場に向かう途中、ふと『バルジャンの独白』が頭の中に聞こえ始めた。 フルコーラス。 そのままファクトリーのシーンへと歌い継がれる。 わたしの中で。
劇場に着く。 案内が来るまでこちらでお待ちくださいと、ドアの内側に立たされる。 舞台を観たら、ボスが正面を割って出てくるシーンだ。
おぅあ! ……完全につながっていた! わたしの内・外。 びっくり。

このミュージカル。
ひとつの役に約4人ずつキャスティングされているはずなのだが。
日付も選べないままにようやく取れたチケット、この日が3回目でしたが、3回とも同じ配役が3人。 (そりゃ、祐くんは当然として) 不思議ね。 2週間後の次回はさすがにバラけますが。 ま、なので今のうちにちょっと、書いとこうかな、とか。
ところで3人、仲良しなのね。 これも意外。

3人のひとり、クコさんが。
もっと軽やかな悪党に役を作るかと思っていたので、重さがちょっと意外でした。
毎回、嫁役は違う方なので、かれは同じ人物なのに夫婦の関係性がチョットずつ違って見える。 でも違和感がない。 
この方の、シリアスで複雑なストレートプレイ(脇役で)を一度観たいと思ってるのですが、どうなのでしょう。

3人のもうひとり。 
ロマンティックでピーターパンなジャベ、だって気がします。 いいコトかどうかは、わからない。 ありきたりなジャベを期待した観客は、裏切られるだろうな。

もしかしたらね、
バルジャンは愛されるために「善人」という化けの皮を被った乱暴者の大男で、ただ、死ぬまでキッチリと化けの皮を被り続けたことで、それが真実という評価になった、のかもしれない。 (わははは、信じちゃダメよ!)
だからそれに対応する存在として、
信念に正直過ぎるゆえに、周囲から嫌われるのがジャベールかも、と。 自分を強いルールで神経質に縛る一方、他方では強いあきらめを持つ。 そんな禁欲的で孤高の人の香らせるロマンティック/揺らぎって?と思うと、どきどきどき、透明なオトナの色気があるわね。 (だから信じちゃダメだって!) かれはきっといつだって、ひとりで夕飯を取るんだわ。 ベッドの上で、身動きもせずに眠りにつくの。 そして。
そうか。
ふたりとも、キリスト教信仰に対するスタンスの両極端ともとれるのね。 

 

相変わらず、
ため息はついちゃうんだけれどね。 主にアンサンブル。
きれいな平行線(つまり全員棒立ち)には、苦笑。
 
段取りを間違えることはないけれど、何かの反応としての動作にはなっていないから不自然で。 何故、そこで手を伸ばす、走る、何故か考えてから動けよ!とイチイチ、心の中で突っ込みながら観ているわたし。 (疲れるはずだ)
舞台の上で、ただその役となって存在することが、そんなにそんなに難しいのかと、今回よくわかりました。 自分を消せてないんだなあ。 過去のいろんな舞台であたり前に観てたことが、実はすごい技術だったのね。

あと、死ぬときにはがっくしと、首の骨を折りそうな勢いで亡くなるのが流行りなのか? 
……それだけ元気なら、死なないと思うぞ。
スローモーションが下手過ぎるよ。 最初にわたしを魅了した各パートがずたずただ。
……(師匠によると太極拳が訓練になるそうです!)

その中で、すんごいお気に入りはガブちゃん! 海人クンってコです。
だって、学生たちの後ろで、憧れを持ったガブローシュとしての背中を見せて、立てるんだよ! (微笑) マイッタね。

 

で、今回、レ・ミゼを観て強く感じているのは、
これをミュージカルにしたクリエーターたちは、すごく青かったんだなあということです。 今まではわからなかった。
結構、勢いでぶっとばして作っている。 天才的なセンスと計算のうえで。
ユゴーも、見方によってはベタな大衆小説を書いているわけだし、
だから、
うっかりと足をとられると、
簡単に、
上っ面をスベル芝居になってしまう んだろうな。

  

8月にあと2回、観る予定です。