あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

繭の中

マンションに組まれた足場に白いネットがめぐらされてから、部屋には障子越しのような淡い、揺れる陽が届く。
光がぼんやりした中にいると、自分の血流も鈍くなるようで、
時間も止まったような感覚になる。

風があると、白いネットが次々とさざなみを吹き降ろす。
ネットのうらがわ、というよりうちがわ?から眺めていると、
海を眺めている気分になり、やはり時間が止まる。
止まるというより、
ループになると言ったほうがいいか。

 

若いころに読んだ渋い小説に、そんなシーンがあった。と思い出す。
雪深い月山の家にぼんやりと閉じ込められて、米と大根の味噌汁を食うだけの日々、から生還するまでの精神の沈殿と――えーと、まぁ、そんな話。
タイトルも、『月山』とか、そんな感じの。

(と、今、調べてみたら、芥川賞受賞作で映画化までされてた) 

その中で、繭に閉じこもって暮らす意識みたいなシーンがあったはずと思い出す。

 

今の、この感じ、か?

外は明るくやさしい光に満ちているけれど、
白いうすかわ一枚でへだてられている感じ。
いずれ、何かをしなければいけないと自覚はしながらも、今はまだ、眠っていたい。

蛹。

蛹な自分。