マンションに組まれた足場に白いネットがめぐらされてから、部屋には障子越しのような淡い、揺れる陽が届く。
光がぼんやりした中にいると、自分の血流も鈍くなるようで、
時間も止まったような感覚になる。
風があると、白いネットが次々とさざなみを吹き降ろす。
ネットのうらがわ、というよりうちがわ?から眺めていると、
海を眺めている気分になり、やはり時間が止まる。
止まるというより、
ループになると言ったほうがいいか。
若いころに読んだ渋い小説に、そんなシーンがあった。と思い出す。
雪深い月山の家にぼんやりと閉じ込められて、米と大根の味噌汁を食うだけの日々、から生還するまでの精神の沈殿と――えーと、まぁ、そんな話。
タイトルも、『月山』とか、そんな感じの。
(と、今、調べてみたら、芥川賞受賞作で映画化までされてた)
その中で、繭に閉じこもって暮らす意識みたいなシーンがあったはずと思い出す。
今の、この感じ、か?
外は明るくやさしい光に満ちているけれど、
白いうすかわ一枚でへだてられている感じ。
いずれ、何かをしなければいけないと自覚はしながらも、今はまだ、眠っていたい。
蛹。
蛹な自分。