普段は閉じた本棚を覗くと、結局久しぶりな本を次々と読んでしまう。
そして今日読んだ『バルバラ異界』の、フキダシの中の単語ひとつに、発見がある。
若いコが。うっかりと、認知症をニルヴァーナ(涅槃)と言ってたのだった。
涅槃とは、仏教思想で煩悩を吹き消した状態のこと。
50歳を過ぎるとね。体力知力が、ガクリと落ちるのを実感する。
それは恐怖。自分が今までの自分ではないと、劣化していると、くっきりと知らされるのね。
過ぎていく時間や、同年代の友人との話題の中で、現実と向き合い、
よっぽどお気楽に生きられるようになってよかったよねぇとか笑いながら、
受け入れるのだけれど。
自分より年上の劣化と向き合ったときが、ちょっと辛い。
ご自身の劣化と向き合ってショックを受けてるなと、気づいたときが、辛い。
煩悩を吹き消すこととは、自我を失っていくことだ。
『バルバラ異界』の中では、自我=孤独と説明し、みんなとの意識の共有(脱孤独)の是非を問い、世代のつながりに夢や希望をつなげる。個であることへの愛着。
今日、出会ったのは、逆の考え方。
自我の認知を失うことは、涅槃なのだ、と。
なんという救いだろう。仏の行き着く先とは、老いを意味していたのか、と。