あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

災害ボラ・フィールドリーダー養成講座 その2

講義の2回目は、「災害時に求められる医療対応」

応急手当とか心肺蘇生をやるのかな?と思っていたら、それ以前の「判断」のシュミレーションでした。 
重症の怪我人を目前に、多様な可能性とチェックポイントに、何をしますか? 落ち着いて対応できますか?

半分は、ワークショップの進め方講座みたいな流れだったかもしれない。
ブレーン・ストーミングは、実はアイディアがその場の雰囲気に沿ったひとつの方向に流れやすいので、独特な意見を引き出したり、バリエーションがほしかったりするときには、考えようなんですって。
この講師の方のおすすめは、
まず各自がテーマに沿ってマインドマップを書き、リストアップして、
その後、小グループに分かれて各自が読み上げてから話し合う、という方法でした。 
確かにさくさくと、無駄なくつっこんだ意見交換が、短時間でできました。
(これが意見交換のベストであるとは限らないと思うけど、ひとつの方法として、覚えておくにはいいかも)

 

一番、目からウロコだったのは、

ペアを組み、片方がばったりと意識不明(仮想)になる。 
キー、ガシャン。 目の前で車が激突。 運転席の人がハンドルに被さっている。
さて、この「目前の重症の怪我人」に、自分は何をするか。 できるか。

声をかけて意識を確認して。周囲に手伝いの声かけをして、呼吸を確認して、119番して、出血は?吐き気は?保温は?首は?・・・・・・
と、話し合い、講義を受けた直後でも、
実際のわたしは、声かけと、肩たたきと、周囲に助けを呼びかけるくらいしかできませんでした。 その1分が、長い長い。

完全に意識不明、うつぶせになって顔も胸(呼吸)も見えない、あたたかい女子を前に、
マジ、頭は真っ白に近いです。 返事をしないからだ、机に乱れた髪が、
――怖い。 立ちすくむ。

2巡めは、意識があってブロックの下敷きにという設定。
応えがあって、会話ができると、かなり安心する。 いろんなチェックポイントを確認できて、
この2分は短いくらいにいろいろと出来たのでした。

ただ、災難?だったのは、わたしとペアを組んだお嬢さんで、
怪我人になった番で、わたしが思い切りわがままを叫んだから。
おろおろするのが、かわいかった。
「もうっ! 何、泣いているんですかっ!」
ごめん。 叫びながら、腕に縋りながら、笑いすぎた〜

偶然に。
隣に座ったこの方がね。 先々月の豚汁ボラのときにご一緒した方のお嬢さんと判明。
言われてみたら、お顔がそっくり。 なので初対面だが、気安い気安い。

 

次の講座は、また2週間後。 今度の会場は、消防署!

 

さて。 参考までに、10年前の経験を。
(古いHPのリンクを貼ろうとしたら、前後に、微妙にヤバい描写がw)
かなり生意気ですが、なにとぞ大目に。 

『駅前にて』
歩きながらふと顔をあげると、5メートルほど先で少年が倒れてびくびくと大きく痙攣していた。
若いママとおまわりさんがしゃがんでいるから平気かなあ、交番の中ではもうひとりのおまわりさんが電話しているし、などと通り過ぎようとしたら、少年はゲホリッと口から血を吹き始めた。
あお向けてちゃだめだよ〜。

そっか、若いママは通りすがりの他人だし、おまわりさんもこーいうときは、案外普通の人だったりするんだ。
荷物を足元に置いていると、一足先に青年が駆け寄って少年の頭とからだを横にした。
てきぱきと指示を出し、手を折って頭の下におき、下になった脚も折りこんでやっている。
「あなた、お医者さま?」
若いママが不安げに訊く。正しい対処か判断がつかないらしい。
「大丈夫です、僕この間、大学祭で習ったばかりで」

みているおばあちゃんが、「身分証とか持ってないのかしら」といいながら、からだは動かない。
わたしはついに3人目になる。リュックのポケットを開けていく。
この子供なら、きっとわかりやすいように持っているはず。
大学生が見つけ、ざっと目を通しながらおまわりさんに渡し、「こちらに連絡をさしあげてください」「は、はい」ふーん、こういうときのおまわりさんて、素直だな。

「リュックはずしてあげられないの?」とおばあちゃん。「はずして枕にしてあげれば。ズボンも緩めて」
結構、頭って動かないもので。
ああそうか、と若いママとわたしは言われるままにそうしてあげる。
「何か敷くものないかしら。アスファルトが凄く熱い」とママ。
おまわりさんが交番からシーツを持ってきて広げる。
「頭は、動かさないように」と大学生。「そういえば、かれが倒れたところ見た人はいませんか? 頭、打っていないか…」返事なし。

おばあちゃんが心配そうに、「あおむけてあげた方が楽なんじゃない?」
大学生が強く否定する前に、横をむいていれば気道が確保できてますからとあわてて説明したものの、こんな硬い言葉じゃ通じなかったかな。
それにやっぱり、あお向けると気道か神経を圧迫しやすいのでとちゃんと否定した方がよかったかなと思うが、とにかく今はそれどころじゃない。

→えーと、たしか、頭を打っていた場合は仰向けに寝かします。仰向けにしたとき難しいのが気道の確保。病人に意識があったら判断しやすいけれど、あごがひいた形だと気道がつぶれ、のけぞらせると頚椎が圧迫されます。あごをつかんでひきあげてやる形がいいとか。
意識がないときは、嘔吐物や舌が喉をふさがないように全身を上記の如く横に向けます。

そういえば、かれに呼びかけてない。
身分証をみた大学生に少年の名まえを確認して、わたしはかれの背中を心臓の鼓動のリズムで軽く叩きながら、声をかける。
大丈夫だからね。もうすぐお医者さんが来るから、大丈夫よ。
自信に満ちた落ち着いた声で。背筋のあたりでは、実は動転しているのだけれど。
少年が目をあけ、軽く首を振る。
「よかった。意識がある」
この大学生、いいヤツだなあ。

(ところでこの、名まえを呼びながら背中をぱたっぱたっとしてやるの、子供の病気には結構効き目あります。
子供のいないわたしが言うのもなんですけれど、一番不安なのは子供自身なんだもの)

シーンは戻って、
「ね、薬とかもっているんじゃない?」とおばあちゃん。
どうでしょう。でも持っているとしたら、身分証と一緒にはいっていたと思いますけど。
「そうですよね。持ってないと思います」と大学生。

少年は血のついた口を軽くあけている。どうしよう。わたしのハンカチは汗まみれで、噛ませるには気の毒だ。
4人目が、少年の頭の位置に陣取る。
「ハンカチか何かがあるといいんだけれど」
若いママがバックからミニタオルを出し、ふたつ折りにしてネジってわたす。
なるほど、ああ折ればと、ひとつ覚えた。
「僕、医者ですから」4人目が静かにおまわりさんに言う。
「もう一度、発作がきたとき、また舌を噛まないように。とっさに指さしこむと食いちぎられる畏れがあるんです」
お医者さん、テキストどおりだなあ。噛まれたことないでしょ。
と、急性酔っ払いを吐かせようとして経験した者は、内心ふふっと笑う。そりゃ、酔っ払いと病気とは比ではないけれどさ。
「さあ、これを噛めるかな? ほら」
口あけられる? そう、そうよ、くわえて。 いい子ね。
こういうときには、不思議と女の声のほうが届くもの。
男の声に反応してもがこうとするのを、女の声が静めたり。

しかし、救急車って、遅い。
あとは待つだけになって、ときどき声をかけ、背中をずっとぱたっぱたっとしながら、ずいぶんと待つ。
やっとやっとストレッチャーが横に来て、わたしはその場を離れる。
状況説明は、お医者と大学生で充分でしょ。

さて、
こういうときの処置を知識として一通り知ってたつもりでも、いざとなると結構思い出せないもの。
→同じことをしても、シロォトが施す場合は「手当て」といい、プロの場合が「処置」だそうです。
今回は数人の通りすがりが順番に、やるべきことを思い出して対応できたけれど。
そして家に戻ったわたしはおさらいをしようとサイトを探したけれど、探し方が悪かったのか、見つけられなかった。
これさ、みんなが当たり前に実習しなければいけないことなのではない?
うん、これは主張したいぞ。

あの子供たちが、社会で安心して歩けるために。