あとりえあげん

世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。 HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

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悪い咳

1月『ラ・ヴァルス』の公演の映像記録は友人のレミさんにお願いしたのですが、ようやく編集チェック用のDVDが送られてきました。 遅くなってごめんねと言われたけれど、クールダウンを考えるとわたしはちょうどよかった気もします。 
(関係者のみ配布の予定です)

カメラが入ったのは、初日と楽日。 どちらもわたしは観てない回(!)なので、どきどき。
わたしねえ、
自分が書いた初めての芝居の、初めて立ち上げた劇団の、初日。 実は観てないんですよ……。

 

暮れの頃から、悪い咳が止まらなくて。 
これが風邪薬も咳止めもまるで効かず、正月に熟睡して温泉に入ってマッサージしてもらったら、いよいよ悪化したという咳で。
熱もなく、他の症状もなく。
こういう言い方すると悪徳宗教じみてて嫌なんだけど、どこかの稽古場で、もしくは誰かが引っ張ってきた「悪い気」を吸収したなと感じてました。
だったら仕方ないかぁ、他の(特に役者)が背負うこと考えれば。と、諦めて。
周囲には、たぶん気管支炎かなんかだと説明して。 (ま、実際にそうかもしれないし)

これはもう、3日間5公演とも、客席には入れないなと覚悟して、
ゲネ(通し稽古)だけは観て。
演出家には、出入り口前にいて咳き込みそうになったら出ればいいんだから、本番というより客席は絶対に観てるべきだといわれたんだけれど、
自分が客席のノイズになることは耐えられず。

初日は冷たい雨の日。
わたしは階段上の入り口に立って、初日のお客様を全員、自分でお出迎えしました。
それでずいぶん、気が済んだのか、

上演中、受付にいることは、思ったよりも辛いことではなく、淡々とした気持ちで。
だから初日の感動もなく。 
わたしにとっての今日は、通過点に過ぎないのかなあとか思いながら。

終演後、なんで観ないのと出演者のひとりから怒られ。
観ませんから、と意地を張り。

ただ、家に帰って風呂の中でひとり泣きました。
時間をかけて大勢のチカラを借りて、
自分が組み上げてきた「初日」というパフォーマンスの客席を目撃できなかったとは。
もちろん、そんな泣き言はユニットの誰にも言えなくて、まあ、弟にはメールで少し。
あなたがその客席にいてくれたから、ちょっと気がすんだよって。

翌朝。
件の出演者のカレシさんから、別件でメールのやりとりをしてたら最後に、
「今日はちゃんとみてくださいね」と書いてあって。
なんか、そのカレに言われたら(ピュアな青年なんです)、素直に見なくちゃと思い直せて。

じゃあ、どうすれば咳を止めておけるかと、真剣に考えました。
ありがとうね、Hくん。
ポシェットいっぱいにのど飴を持って、口の中から飴を切らさないという原始的な方法しか思いつきませんでしたけれど。 効果はあった。

その日はマチ・ソワと観せてもらいました。 
ん。
そうなると、夕べのベソはどこへやら。 ソワレはちゃんと、客席のうしろからお客の背中を見てました。 
スタッフとして劇場にいる喜びは、ここが一番実感できる気がします。

この騒ぎのしわ寄せは、結局、
一番お世話になった制作さんが1度も客席に入って観られなかった!という、ひどくとんでもなくどうしようもなく申し訳ない結果を招きました。
ごめんなさい。 本当に、ごめんなさい!

 

咳は、
公演終了の翌日から1週間くらいかけてゆっくり収まりました。

過ぎてしまうと、あの咳に何の意味があったのかなんてどうでもよくなり、
初日が見られなかったことも、特に意味も持たず、

ただぼんやりと「次」を考えているだけだと気付きます。

 

という初日を撮ったDVD。
そうだな。 わたしだけの宝物にして。
みんなには楽日のほうを配布しようっと。 (理由はそれだけじゃないけれど)