あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

「異人の唄」を観た

                          2007/11/18 13・00〜 新国立劇場

観たい芝居がいっぱいある中で何故か今日は、全部が全部、マチネ公演のみ。
なのでその中で、一番観たい芝居にいきました。

鐘下サンが演出で、土田世紀さん原作。 そしてなんといっても、土居裕子さんのアンチゴーネ。
土居さんのアンチゴーネ! キャスティングした人、エラい! 思いもつかなかったよ!

3つのギリシャ悲劇から構想された3部作を、それぞれ異色の作・演出の組み合わせで。という企画。
つまり土居さんがアンチゴーネの役そのものを演るわけではないのだけれど。 

土田世紀さんのまんがはご多分に漏れず、早い時期に雷から読まされた「同じ月をみている」しか読んでいなくて。 これはちぐはぐな部分に首を傾げることも少なくなかったのだけれど、やっぱりそれを超える迫力はすごくて。
土臭さとか因果関係とか。 わたしみたいな都会人間はもうノックアウト。

今回の原作も期待に裏切られない設定でした。

わたしが書きたいモチーフのひとつに「ヒルコ」があるのですが、それが「エビス信仰」という形に発展して出てきていたのがとても興味深かった。 (蛭子と書いてヒルコともエビスとも読めるでしょう? 恵比須・恵比寿神の原型)

よくないなと思いつつ、鐘下さんはどういう演出をつけてこのシーンにしたんだろうとか、考えながら観ている自分がいる。
立ち居地のバランス、客の視点(興味)の移動による緊張と弛緩。
美しい……。
砂のくぼ地を思わせる装置と月の光を思わせる照明が、それだけで不安な緊張に引き込んでくれる。 すごいな。 予算があるって。
コロスのダンスがぐちゃぐちゃなんだが、うーん、あれでいいんでしょうか。 

木場勝己さんの端正に響く声。 
バレエダンサー小林十市くんと元宝塚の純名りささんの抱き合う姿が、違和感なく完璧に美しくて。 それだけでメッセージになってしまいそうで。 
最後に土居さんと純名さんが、土着性の強い唄を短く歌うのだけれど。 それだけで舞台空間のすべてを浄化させてしまい。
だから作品のテーマとは別に、極められた「美」が持つ強さとか意味とかも考えさせられてしまった。 

S席が、いっぱい空いてました。 もったいない!
わたしが大好きなタイプの演劇空間が、今の時流には人気が薄いのはよくわかった。