2007/4/14 12・00〜 帝国劇場
数日前から幾度か、観に来いと心の声に呼ばれ。
スタッフしている友人が、舞台操作のデビュー♡をしたというし。
朝、ふと時計を見て、おっ、行ける!と思い立って、行く。 職場では大引越しの準備(その最中に8時間におよぶ作業をねじ込むバカ営業もいて)の最中で、心身ともくたくた。 夕方からは劇作塾の定例会で、日曜日は結局出社だから……。 逃せないわ、このマチネ。 ふぁいとぉ〜***はああ
(で、何に呼ばれたかは、あとになって知ることになる)
まいりました。 おみそれしました。 すばらしい舞台でした。 満足です。
熟した……というのか。 みんなが目指していた完成点に到達したね、というのか。
何ヶ月もかかって、今ようやく「産まれた!」っていうのか。
一番うれしかったのは、マルグリットの役どころが見えてきたこと。
かの女は、衆愚の「揺れる良心」なのかもなぁ、と。
または、時代に利用されたユダなのかもしれない、と。 (最後のマリーがジーザスに通じるから、そう見えるのかもしれないけれど)
もちろん当日券で入ったのですが、
この公演は何故か、チケットに余裕があるので、他のミュージカルでは考えられないようないい席。
そして
わたしは今日、この席に座るために呼ばれたんだなと、後から思うことになります。
隣に座ってたおばさんの感動を、この身に叩き込まれるために……。
失礼な言い草をすれば「田舎のおばちゃん」をイメージしてください。
開演前、うれしそうにおベントを召し上がってるのを見て、内心、大丈夫かなぁと思う。
明るくて派手でわかりやすいミュージカルじゃないですよぉ、これからの舞台。
第一幕、びっくりしながら舞台に引き込まれていらっしゃる。
確かに、いい舞台なんだもの。 引き込まれずにはいられないパワーがあるもの。
あまりに素朴な分析、時代がかったミュージカルへの捉え方が、ちょっと楽しくなってきて、
休憩時間、本を読む振りをしながら、ご友人との会話に聞き耳を立てる。
豪華絢爛なマリー・アントワネットの生涯のミュージカルだと思っていたのに、最初に汚い人たち(民衆です)がいっぱい出てきたからびっくりしちゃったわ。 ああ、そうやって両方の層から描くからすばらしいのね、このミュージカルは。 うんうん。 で、わがままでやさしくない王妃さまだったから、みんなに嫌われて死刑になっていくのね。
……えーと。 あー。 大丈夫かなぁ……、第二幕は、もっとハードだけれど……。
第二幕の民衆に。 かの女は姿勢を正して凍りついた。(まさに←文字通り)
心臓をわしづかみにされているのが、わかる。
言葉にならない感情が、嵐のようにかの女を襲っている。
わたしは、
かの女の気持ちにそっと自分をシンクロさせてみる。
舞台の出来以上に、かの女を震わせている感動が、わたしのコアを感動させる。
思いあがっていたね、わたし……。 理屈とか技術とかじゃない。 魂のぶつかりあいなんだ。
客電がついたとき、かの女は何も言えないでいる。 ご友人に気の利いた感想をいいたいのだが、ふふっと詰まるような息が漏れただけだ。
わたしは(心の中で頭をたれて)席を立つ。
帰りの電車で、わたしは何か大きなものに跪きたい気持ちに襲われる。
これが演劇のチカラ、だ。
うん。
(で、わたしがそのとき、読むふりをしていた本ですが、10ページくらいしか読まずに紹介してもいいのかわからないけれど。 これはこれで、うあああっと心をつかまれました! 「ワキから見る能世界」 安田登 著 NHK出版)