あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

リアリティ

お話を編むということは、何もないゼロから、いかに自分が伝えたいことをうまい具合にひとつの形として表現するかということだと思うけれど、では何をベースにして立ち上げていくかというと、結局、自分の日常のあれこれの寄せ集めなのだと思う。

だが、ひとりの人間の日常の容量など、ホントにたかがしれているから。それを補うために、本を読んだり他人の話を聞いたりすることに励むこととなる。たぶんわたしは、他の人より本を読むことに熱心だし、会話の中で「なんで?」「それで?」と突っ込んでいく回数も多いのではないかと思う。

お話でおもしろいのは、他では例をみないようなエピソードだ。だが、あまりキテレツでは、しらけてしまう。だから風変わりなネタを、いかに自然に表現するかという描写のあり方にアンテナを張る。

それはたとえば、こんなことだ。(今日のネタ)

久しぶりに遊びに来た友人が、中国茶をいれながら、近況を語る。(この中国茶についても、語ることはいっぱいあるのだが、また後日) かの女は下町にあるビルのオーナーで、外人などを相手にそれはすごい事件にいっぱい巻き込まれていて、遊びに誘ってもいつも、事件の騒ぎか本人の体調不良のせいで忙しい。数ヶ月前も、かの女のビルは現場として、ひんぱんにニュースに映っていたらしい。

その事件を笑い話として聴きながら、他の友人がわたしの顔を見る。「すごく演劇的だよね。数本、かけそうじゃん」 そうなの。 いつか、書くわ。 取材にいかなくちゃ。

で、そのときの警察の態度が、あまりに唐突で失礼だったので、かの女のおかあさまは怒鳴って追い返してしまったんですって。 (うわ、カッコいい。「ま、オンナが生きていくってそういうことよね」 いやあ、にしても、ねえ) あわてた警察はすぐに手土産を持って、謝りにきたって。

「びわゼリーと落花生を持ってよ」 ん、と……? 「千葉県警だったから」 なるほど〜、みんなで手を打ったよ。 

千葉の落花生はともかく、「びわゼリー」なんて単語は、イマジネーションだけでは絶対にでてこない。 でも言われれば、あっと思う。 そう、リアリティを出すポイントは、こんな一言にあるわけだ。 実際にお話を作るときは、千葉を他の県に置き換え、「びわゼリー」に変わる製品を探す場合も出てくる。

お話を作る人間は、この「ぴわゼリー」を生活の中で掃き集めてくることに、ひどく情熱を持っているといってもいいんじゃないかと思うよ。