2006.6.6. 18・30〜 帝国劇場
あげんのオススメ度 ☆☆☆☆☆
その日の仕事に、あまりにくたびれ果てて、「先に帰りまーす」 終業時間の6時きっかりにタイムカードを押した。押したとたん、思いついた。このまま帝劇に向かうと、6時半からの舞台が観れるのかな? (観れるんだったら、7・8月、お金はいくらいるのだろう) そのときはまだ、その晩に観るかどうかは、決心しきれていなかった。何しろマジ、くたくただったのだ。観るとは決めていた舞台だったけれど、もっと体調のいいときにだねえ。……でも劇場入り口に着くと、からだはそのままチケット窓口へ流れ、「Sを1枚」と言ってから、あ、わたしこれから、このまま、ミュージカルを観るつもりなんだと、自覚した。
席につくと、コンダクターがすでにオケ・ピットいて、客席とおしゃべりしている。あれ、なんか、いい雰囲気かもと思ったら、突然そのまま、オーバーチュアに流れ込んだ。うわわわわっ♪ 笑みがこぼれる。細胞が、生き返る。……誰? もうくたくた、だなんて言ってたのは? 思い切りハッタリをかます、典型的なミュージカルメロディに、もうノックアウト。
伯爵家が行方不明のたったひとりの血筋を探し出したら、下町のちんぴらでした。さあ、大騒ぎ……。
全編、いかにもミュージカル的なミュージカル。タップシーンを中心とした振り付けが、とってもキュートで大迫力。ときどき騙し絵的な演出があり、ぞくぞくした。そう、古典なのに、ちっとも古臭くなく、「今」を表現している。考えてみるとこれは不思議ね。何故だろ。
「ME AND MY GIRl」は、15年前にロンドンで1回、観て以来なのだ。英語がまるでわからなくても、爆笑しっぱなしだった。人々が飛ばしまくっている駄洒落が聞き取れないことが、ちょっと恨めしくて。そのとき、ボードビリアンっぽいおじさんが主人公を演じていて、とてもおかしくて、でも設定からするとこの役は青年? いや、これでいいの?(言葉がわからないから、結論が出せなかった) その役を今回は、プリンス・井上芳雄さん。乗馬服もタキシードも、タップシーンもいろんな小技もびしっと着こなして、……あのぅ、ビルって下町育ちのちんぴらの役なんじゃあ。でも、いいの。許すわ。……ス テ キ ……。
相容れず対比するふたつの世界、下町と貴族。どっちをも皮肉り、馬鹿馬鹿しく笑い飛ばしているものの、若い恋人たちを引き裂こうとする状況に、何故、共存できないのだろうねと、人間の哀しさがほのみえる。(日本じゃ実感が薄いけれど、何しろイギリス。国土の4/5をいまだ少数の貴族が領地として所有しているお国だ(注・この数字はウロ覚えです)。
もちろん、ハッピーエンドです。ビルの最後のせりふ、不覚にも涙が出ます。そしてもう、客席ごとノリノリのカーテンコール。
マジ、幸せ。