なんかね。舞台を観終わってから、前頭葉のあたりがたゆたゆと幸せで、それを味わってるだけで数日が過ぎちゃった。
なんとも幸せな言葉たちだった、と思う。
言葉が、ひと言ひと言、吟味され、ていねいに発せられ、つみあげられて、気持ちの流れを追っていく。歌のいち音いち音もしかり。うれしく懐かしい密度でした。
いいなあ。言葉たち、幸せだよね~ よかったね~ と思う。
特に綾ちゃんのおかげかな。ありがとうございます。
その原因のひとつに、まあ、祐一郎さんのアクシデント?があるにせよ。
あのね。ジャズシンガーの綾戸智絵さんが以前、高音がでなくなったとき、声は届かなくても気持ちが高音に届けば、客席には通じる!とおっしゃってた。
そりゃあ、ミュージカルは声が届くのが基本だけれど、(や、そればっかりではないんだが、ほんとは) 声が出せないときは気持ちと集中力でフォローする、のも方法なのかな、とかね。それが、えーと、忘れていた大切な原点を思い出させてくれたかもな、みたいな結果だった気がします。あそこまで技術的に必死になって歌うって、今までなかった気がするし。
さて。複数キャストは、綾ちゃんとかなめさんの回でした。
このミュージカル、回を重ねるごとになのか、演じる役者さんによってなのか、観るたびに違うストーリー設定に感じるのがおもしろい。
(あ、演出家さんの思うツボ?)
今回、一番うれしかったのは、よーやく! 「わたし」とマキシムが恋に落ちる一瞬が、ちゃんと提示されてたことでした! 初演、再演、再再演でも今まで、あやふやだったのよ~ そこが圧倒的に不満だったの!
おかげでなのか、そのあとの恋愛ドラマが、あっちへこっちへ転がって、ふくらんでいくじゃん。納得するじゃん。ステキじゃ~ん!
綾ちゃんの「わたし」は、やわらかさの奥の芯が強くて。
かなめさんのダンヴァースは、ほかの使用人たちからかなり浮いた存在で、当主マキシムもうんざりしてる感が強く。
なので、マキシムは屋敷の空気をガッツリ変えたくて、ダンヴァースに「わたし」をぶつける気満々でつれてきたのか?とか、思っちゃいました。
新しい感覚だわ。
マキシムくんも、貴族然とした奥で、実は取り繕ってるやさしいダメンズぶりに拍車がかかり、こちらの気持ちをくすぐってきますね。
あとね、
ダンヴァースが『♪レベッカI』を熱唱している後ろ、窓の前にたたずむワンピースの綾ちゃんが、窓やその向こうの海もコミで、絵のように美しかったな。たいていの方はダンヴァースさんを見てるシーンだけどね。
後半のダンヴァース、
知寿さんのは、静かにもろく崩れ落ちていく感じですが、
かなめさんのは、内面がぐちゃぐちゃに大きく壊れていく感じ、ですね。シーンがすすんでいってる後方を、すうっと横切るだけで、「あ、動揺してる」と思わされる。
(関東・関西の差?とか考えたりして)
この回であたらしく感動したのが、ベンの歌でした。
人の気持ちの不安定が、恐ろしくも美しい。のがテーマだったんだなあと、今さら改めて、思う。
考えてみると、このドラマ。正義はあやふやなわけで。人間は、恐ろしくも美しいってことが、一筋の張り詰める糸なのかもしれない。と思ったりするのでした。