あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

『モーツァルト!』

あの~
以下は、関係者以外の方が読んでも、まじ、なんのこっちゃ?な文章です。わたしは不親切なのです。ごめんね。しかも帰り道、こんなことについて考えをめぐらしてどうするんだ? だから何? と自分でももてあました感想もあるしね。
でも、迷った末に、自分のために書いておくことにしました。

 

ほんとは昨日が初めて観る予定だったのに、なりゆき(!)でその前に1回観ちゃったので、いくくんver.よしおさんver.すでに両方楽しみました。
その2回を通して、いろいろとうれしい発見や何故?があり、よしおさんやおじさんたちが、日本のミュージカルパフォーマーの進化の方向を魅せてくれた手ごたえがあり、今後の日本のミュージカルがずいぶん楽しみになってきました。

わたしは新しく感じたのだけれど。単にわたしの視座が変化しただけって可能性もあるのかな。そのへんは自分ではわからないですね。

 

全体の印象から書くと、4年?以前の舞台より、芝居としての空気感が整理されて濃密になったと思います。キャラ同士の感情のこすれあいの裏打ちができてきていて、俄然おもしろくなった。そして昨日の舞台では笑わせるシーンが増えてきていて、シリアスとの振れ幅が豊かに細やかに、でも親密で。
演劇をみていて、ああ、いいなぁと感じるアノわくわく感が、立ちあがってきてて。
でも、ショーのシーンでは華やかにあっけらかんと楽しいショーで。そう、ここなの。演劇ではなく、ミュージカルのよさ。
人生は辛いけれど、チョット切り替えれば心地よくなる、ひとりのおとなとして、がまんしながら笑いながら、生きていくってステキだよねえ、と感じさせてくれる、 

 

冷静さと客観。
どの曲のあとだったか忘れたけれど、ひとりで拍手をあびたよしおさんがチラと目の中でだけ、素に近い微笑みで客席の感動を受けとめてから、ハケてらした。劇場に、人間同士の、大勢の一体感が、刹那だけよぎった。ステキだなと思ったんだ。
よしおさんの今の身体の在り方は、ミュージカルのお手本だと思う。台詞と歌の溶け込み具合、フレーズごとの解釈、魂の開かれ具合と、その奥に隠されている固さ。
 

そして、ミュージカルという発散と凝縮。
祐一郎さんが、全体のトーンを少し壊すニュアンス。道化である自覚。破調する。ヤブレることで風が起こる。つきぬける。別世界へのステップ。
なんなんだろうね。スケールって言葉でまとめていいのか? いまだによくわからないのよね、この手触りがなんなのか。  (・_・〃)ゞ

 

 

いくくんのヴォルフガングは、等身大というか、自分の感性や情熱に沿わせてそのまま演じている印象。よしおさんのは、分析して計算してつくりあげた人物像を描いている印象。
どっちもステキで、や、同じ役で両方を観られる贅沢でしょう、これは。
あ。ラブラブシーンは、いくくんのほうがきゅんきゅんだったわ~ あと、やさぐれてる(?)様子のいくくんには奇妙な魅力があるよね。

 
で、いよいよ一番の謎についてなんだけれど、市村さん演じるパパがね、それぞれに対して全然違う存在だったように感じたの。
よしおさんのときは、巨大な障壁としての父親に。
いくくんのときは、揺れる心に自らも惑う父親に、
わたしには見えたの。これは、相手による差なのか、日にち(公演ごと)による差なのか、悩ましいの。ホラね、悩んでどーする?って内容だって言ったでしょう?

わたしには(もしかしたらスゴク勝手な解釈なのかな?)、いくくんとのときのパパにズギュンときました。息子という天才に対するコンプレックス、でも父親としての立場で意地を通し、それを自分でも気づいて、内心では深くキズついている、ように見えたの。

 

平野さんのコンスタンツェ(2回ともでした)は、自分の役割を理解されているというか、今までで一番説得力があって、ヴォルフとちゃんと恋もしていて、好きです。
阿知波さんのママは、過去よりチャーミングなショー度がアップしたのかな。(家に帰ってTVで大河をつけたら神妙な顔で出てらして、爆笑) 
この作品はある意味、父系家族と母系家族の対比でもあるんだなと、今回はじめて気づきました。

 

拝見したおふたりのアマデが、全然ちがう芝居をしてて、これもすてきでした。
りんかちゃんは、ヴォルフを冷静にみつめている。みなこちゃんは、ずっと疑問を投げかけている。わー。子役さんたちのこの層の厚さはなんなんだ? これも絶対的な見どころだわね。

 

けーごさんのクールでドライなショーマンシップな身体。これも実は日本では特異かも?
じゃなくて、パフォーマーを自覚するのなら、みんなこれを標準装備しとこーよ。とも思うのでした。たぶん、リズム感なんだって気がすんだよねー。

 

あと、なんだっけ。……

 

 

最後に。
よしおさんが35歳だから卒業!と言ってるけれど。
昔と今とでは「35歳」は同じではないと思うのよ~ 長寿の傾向にあわせて、年齢の持つ意味は変わってきてる。
たとえば。今の日本では誰も、40にして惑わず!なんて思わないでしょう? 55にして、迷わないという言葉の意味が少し見えてきたってくらいよ。

なので。ちょっとぉ! 誰もそう言ってあげてないのぉ?? と、思ってます。
映像と違って舞台では、40歳だから演じられるヴォルフガングもあるよ! 新しい扉が開く気がする、とても観たいよ!! 意地張らないで撤回しようよ!! ってね。
 
 

帝国劇場 ミュージカル『モーツァルト!』