あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

『沈黙』

昔、劇作家講座で知り合った友人・石原燃の書きおろし新作を観にいきました。

これに先立つ燃が書いた公演は「格差」がテーマで、なんだか観にいくのに気が重くなってしまい、パスして。次回公演では必ず!なんて言ってたら、今度のテーマは「死刑制度」。
そっか。そのテーマから逃げ出せない空間はツライ、なんて言ってたら、社会派のかの女の作品はまるでみられないってことか。と気づいたのでした。

 

わたしは、初対面の第一印象でほぼその方の本質が見えるのですが、燃本人に関しては人間的な謎が多くてね。あ、他の方からみれば、知的ですてきな女性なんだろうな。ただわたしには、げ、何故そこにそんなにこだわる? え、そこをガードするの?が多くて。
なので、かの女が何故、こんなことを、こんなふうに書くの?ということのほうに興味があったりします。(で、やっぱり謎なんだwww)

 

もともと高い劇作スキルに磨きがかかり、人間の表現に幅が出てきてたかな。

そして社会派というかの女の劇作スタイルも、ある意味エンターティンメントなのかな、と思いました。こんなこと言うと怒られるかな。
今の世の中、こういうエンターティンメントを求める人たちもいるんだなと思ったんだ。

 

  

今日は終演後にアフタートークがあって、その劇団の主宰者さんと、燃と、ゲストである映画監督の森達也さんのお話をうかがう。

森達也さんが最初のほうで、「死刑というのはただのシステムです」とおっしゃり、その一言だけでわたしは、この方は信用できる!と感じる。(日本では感情論で語られることが多い気がします) 

わたしが思うのはね。死刑制度はあっても執行に選択の余地があるわけだから、考えなければいけないのは、死刑制度を廃止するかどうかよりも、それでも死刑を望む人たちが多数いる日本社会のあり方についてでは?なんだよね。そこにストンとつながったわけです。

森監督によると、世界的には911以降、日本ではオウム以降、厳罰化を望む社会に向かっているそうです。なるほど! (なんか、わたしの中で新しい扉が開いたなぁ)

そして、ノルウェイの刑務所のあり方について紹介してくださり、かの国では罰するのではなく、人間としての豊かさや社交を教育するのですって。犯罪の原因はほぼ、①幼少期の愛情の欠如、②教育の不足、③貧乏 にあることに注目した結果だそうです。

日本では社会復帰のための教育刑といいながら、何故、どこを教育するかはあんまり考えられていないような気がしてきた。

 

そんな話が進むうちに、んん、森さんってもしかして、以前もじゃくんが好きだっていってた映画を撮った方かな?と感じ。わー、この場に連れてきたかったかも、と、思う。
あのね、なんかズットお話を聞いていたいようなステキな方だったよ~

 

 

最近。
罰することやその人を否定することでは解決にならないと、わたしは漠然と感じていた。
相手を個として向き合うことあたりに、ひとつの解決はありそうかも? 相手を強く否定したい人というのは、自分が否定されたくなくて下手をうつだけなのだから。とか。

その辺の考えの裏打ちをもらえた気がした。

 

というわけで、
帰り道、燃に今日はありがとうメールをしたわけだが、「楽しかった」という表現になってしまった。あとから考えたら、死刑制度についての芝居を見せてもらって楽しかったはなかったか? と気づく。でも、ま、いいよね。

  

Pカンパニー 第14回公演 『沈黙』 @池袋シアターグリーン
作 石原 燃 演出 小笠原 響