あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

こういうときに人間性がわかる@岩手

ヘブンアーティスト被災地支援@岩手 の帰り道。
ボスの橋本Pは、次の地に向かうために(お忙しいです)一足先に岩手を出てたのね。
残ったメンバーはバスの中で、よく食べ(よく飲み)よく寝てよく笑い、あとは新宿に着くだけ!だったはずなんだけれど。

東北自動車道
「ちょっと不安なので次で給油によります」とドライバーさん。どーぞどーぞ。
(ドライバーさんたち、それは優秀なおふたりで、プロの仕事とはこういうことかと教えられたし、「門前の小僧です」とかおっしゃって、力仕事のお手伝いもしてくださるんだよ!)

で、PAに入る細い坂道、
んんんっ?と思ったら、メーターがまばたきをして、消滅。
――バスのエンジンが落ちたっ!!

あれ? あれ? ガス欠? エンスト?
とやってたら、後部席のフットワークの軽いコたちが、
「後ろが車の列になってきてますよ。ちょっと説明してきますか?」と立ち上がってた。
「こういうときは、大勢で動かないほうがいいから、まず座んなさい」と、ブリウリのしげみねーさん。

そっか、スタッフ最年長はわたしでした。ドライバーさんと軽く打ち合わせて、外に出る。

普通車はぎりぎり通れたので、デパート店員さん仕込みに頭を下げて、一台ずつ通す。
さて、トラックが来て、再び流れが止まった。
うん。暗闇の中央分離帯で、女であるわたしがライトに照らされて立つことには、すでに下心があったよ。
案の定、肩をいからせてのしのしと来たトラックのドライバーさんは、わたしを見るなり踵を返した。バスのドライバーに怒鳴りたい人も、女相手だと控えてくれるって、ね。

PAのスタンドからタンクでガソリンを運んで、ポンピングしてもエンジンはかからず。
そろそろバスのエンジンを動かすより、どかして他の車を流すことを優先しませんか?と声をかける。

道路公団の方たちやスタンドの方たちも来て、電話をかけたりあれこれしてると、

「なんやってんだよっ!」とオ約束なヤンキーが登場。「××××××・・・・・・」怒鳴り散らす怒鳴り散らす怒鳴り散らす。
でもね。
結果からいうと、このバカの登場で、
横をすり抜けた見ず知らずのトラックのドライバーさんが行ってしまわずに残って、ほんとうにご親切にもバスの牽引をしてくださったり、(「だってめちゃくちゃウザかったし」と、あとからローカルな言葉で憤慨してらした)
後ろから様子を見に来てたおじさんが、笑い出して「故障は仕方ないんだからさ、全然気にすんなよ。で、どっから来たの。お疲れさん」とわたしに言ってくださったり、
つまりみなさんの怒りの矢印が、わたしたちではなくてこのバカに向かい、むしろ味方になってくださったのでした。
さっきの怒鳴りかけてやめたトラックのドライバーさんは、牽引のジョイントの具合の面倒を見てくださったしね。

助けてくださったトラックのおにーちゃん、お礼を言ってお名刺をもらったら、
専務取締役という肩書きでした。人格も、専務取締役、だわね。

ちなみにエンジンは、牽引してもらって車輪が回ったら、復活しました。
なんだったんだよっ。

 

でさ。
バスはスタンドに向かい、専務さんにご挨拶してて取り残されたわたしを、
公団の方がご親切にも付き添って道を渡してくださって、

スタンドでやれやれ一件落着だぁと、トイレを借りて。
ドライバーさんのおひとりと手を洗いながら、クールダウンしようねとか言って戻ったら、

件のバカがわざわざスタンドまで追っかけてきて、残ったドライバーさんに怒鳴り散らしてやんの。視線の隅に入るところに立って、一緒に頭を下げる、けどさ。
「あんたは客なんだから、関係ないだろ」とわたしをはずしたがるのは、
さっきの道端でのやりとりで、チトかなわないのを知っているから。
もっと言えば、近くに立つもうひとりのドライバーさんは無視ですよ。スポーティーな巨漢だからね。控えめな人間を選んで、鬱憤を晴らしてる。

ああ。エンストしてるときね、
こっちが(当然ですけど)恐縮して謝ってるのをナメたのか、
「後ろの車じゃ、腹が痛ぇって困ってんだよ」と大難癖を始めようとするので、
「救急車を呼びますか?」「あ゛ぁん?」「(大真面目に)具合の悪い方がいらっしゃるのなら、こちらの責任で救急車を呼ばせていただかなくては・・・・・・」

「はい。そのとおりです」「本当に申し訳ございませんでした(←意識して、過去形)」「ご指摘をありがとうございます」の繰り返しで、バカの罵詈雑言はやっと収まり、
下品な言葉を吐き散らすお連れと乗り込んだ黒いワゴンに、丁寧に頭をさげて見送り、
完全に相手が消えたことを確認してから、言いました。

「暇だよねぇ」

 

バスに戻ったら、
しげみさんが無言で笑顔で握手してきた。
うぁっ。この人はわたしの今の頑張りがいかほどだったかをわかってくれてる。うれしい。

と、目の前でスタッフのなつが大笑いしたので振り向いたら、
ダンディーが信条の筒井さんがだよ、ありえないほどひょーきんな顔をつくってフリーズしてて、わたしが見ると崩したのでした。
ほわほわと緊張がほぐれて、大泣きしそうになったよ。ありがとう。

 

 

無事に新宿に着いたとき、全員、大拍手と感謝の言葉だけでした。
あたりまえのようで、素晴らしい。
このことに関しての責める言葉や文句は唯一、わたしがあのバカをあのバカと説明に使っただけですから。
これが大道芸人(とその周辺)の心意気。