日御子 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2012-05-30 |
読み進むうちに、
ものごとの建前、キレイゴトだけでつらつらと歴史の風景が描かれているだけなのに、
なんでこんなに惹きこまれるのだろう?と不思議になる。
邪馬台国九州説をベースにした美しい歴史小説です。
これしか読まなかったら、邪馬台国は九州にあったと説得されちゃうなあ。
三国志の一端がさらりと見え隠れするのも、流れる時の無常を感じさせます。
日本古来の美徳に通じる、ホントに建前だけですべてが書かれているのに、
とても大切なものに心が触れた気持ちでいっぱいになる。
あんまりにキレイゴトだけで構成されているので、作家がどこかの宗教に帰依されたのだろうか?と疑ってもみる。でもね、過去にはかなりアンチモラルなお医者の(ピカレスク?)小説を書いてる方だし?
ま、作品世界には関係のないことですね。
最後まで読んでみて感じたのは、
美しい日本の始まりを淡々と書くことで、震災後の今の日本に静かに問いかけたかったことがあられたのかな、と。
生きるうえでの建前の美しさを貫き通すことが、この作品に対する作家の思惑だった気がしたのでした。
興味深い描写に、これは作家さんが意図したどうかが微妙なのですが、
たぶんわたしが、勝手に読みとってしまっただけだと思うけれど、
倭(日本)の風景の中には澄んだ水の流れがアタリマエにあり、それを当然として生きていることが、日本人の価値感を形成しているかも?みたいなことがありました。
この小説からは離れてしまうけれど、
ホラ。日本って、騎馬文化やキリスト教や、馬車とか、あと何かな。他所ではあたりまえなのに何故か強く根付かなかったって不思議があるでしょう。
なんかね、そこのヒントに繋がる気がしたりもしたのでした。