あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

ジョセフ・ナジの『カラス』

久々にコンテンポラリー・ダンスを観たよ。

枯れてて、ユーモアがあり、集中力が異様に高くて。
突飛といえば突飛かもしれないけれど、
コンテの括りの中では、特に突飛なアート・パフォーマンスでもない。
が、
緊張感と微かな緩みが、類なき美を描く。

どんな日本人ダンサーよりも、とても日本的なテイスト。
声や息や呻きや叫びを含んだ、ノイズだらけのサックスの、インプロを。
(ちょっと尺八っぽく聴こえる)
見つめる、劇場中の眼を。空気感を。
ダンサーは感じ取り、自分の血流の奮えへと、変換する。

反応するということは、コンマ何秒かの遅れ、ということだな、と。
そんなことまで、キッチリと感じさせる。

 

この作品の見せ場のひとつは、自分のからだを黒インクに浸して、
紙にこすり付けてアクシデント・ドローイングな身体表現をしてみせることで。

ゴッホの『カラスの飛ぶ麦畑』を思わせる構図のがあったんだけれど、
パンフレットでもアフタートークでも、誰も指摘してなかったな。

さいごには、インク壷(特殊インクだけで500キロとか言ってた)に、
どっぷりと全身を浸して、
ぼたぼたぐちゃりと、紙の上でのたくるわけだが。

あ、皮膚でアートしているのって、案外と珍しいナと、思いつく。 

この間TVで見たけれど、最近の「生命体」の定義には、
自己や種の、成長や増殖能力のほかに、
自己と外界との明確な隔離(膜とか皮膚とか?)があるらしいのね。
ナジさんは、その部分で、アートしてるってことかぁと、がぜん楽しくなる。

生命の境界で、動き流れる表現を、しているのねぇ。

 

これらの感想は、うん、わたしが勝手に派生させ、言葉に変換してる感覚。
ご本人が、意図しているとは、思わない。

コンテのダンサーは鏡なのだよ。
かれの空気や感覚を通して、わたしは自分の内面を映して見ている。
自分と出会う。
コンテンポラリー・ダンスの最大の魅力は、そこ。

 

アフタートークつき。

萬斎さんの容赦ないつっこみに、インプロの日本語訳ができない通訳さん、
よく頑張りました。
一時間の緊張が溶けて、ぐにゃりとちょっと眠そうなナジさんに、
(でも前日は初日レセプションのあと、別に飲みにいったようだしな)
延々と、コアな質問を掘り下げていく萬斎さん。
あはははは、ステキな性格だぁ。
呆然と、その流れに口出しできない司会者さん。そろそろ切り上げろよという客席の空気の頃になって、自分の質問を繰り出してたこと、自覚してないのだろうな。

その辺の空気も、めちゃ楽しむ。(観客としてイジワルい?)
計算できない不調和という、風景。最大のインプロ(即興)だ!