あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

『レ・ミゼラブル』を観た

2011.5.5. 17:00- 帝国劇場

このバージョンを観るのはこれが最後。
初演のプレビュー公演を思い出し、
日本のミュージカル史のひとときを共に歩んできた作品だったなあと、しみじみ。
この作品を他劇団に渡さずに、東宝さんが契約して育ててくださった幸せを、ふと思う。

(スッパイ葡萄の話をしてもいいのかな? 最後だし。
当時、某劇団の代表さん曰く、大ヒットが約束されているとてもやりたい作品だったと。 でもご自分が右寄りな首相のブレーンだったから、戦争を美化していると評されるのが見えていたので、手が出せなかったと。
真実はどうだったのかは知りません。 あの葡萄はスッパイのさ、と言いたかっただけかもしれない。 あ、わたしがご本人からじかに聞いた話です)

と、感傷的になりながらも。

んん? この微妙なヌルさは何? と、すぐに興ざめする。
幕が開いて1か月、もう「慣れ」ちゃったのか? 

気づくと、膝の上で自分の指が小さく拍子を拾っていた。 あ、指揮者さんが変わったんだ。
こころもち全体にゆっくりめで、ぷ、歌いづらいのね? 拍子の早いほうが、芝居の下手をごまかせる。
Sキャストの稽古が入った影響なのかな?
首を伸ばすと、指揮者さんの大きな振りが見えた。 動きが大きいから溜めが入るって、あるのかな?

それこそ昔は、
もっともっとゆっくり振っていたよね。 歌に演歌的な泣きが入ってたもの。
あ、コンマ何秒かの違いで、バルジャンが最近できないでいた芝居を入れられたな。
でも結婚式のシーンの手拍子は、ノリが悪い。

ふーん。 難しいモンだ。

 

1か月前に観たとき「歌はうまいな」だけだった(失礼)新人さんたちが、成長しているのが気持ちよかったです。 
ジェニファさんエポ、おおっ。 まっすぐでせつない気持ちが届いてきた。 この成長はすばらしい。 好きだったのは、揺れる恋の喜びや幸せも感じさせてくれたことでした。
アンジョの上原さんは、
早くも成長期のとまどい(たぶん日々演技するからだのつくりかた?)に突入したらしいのかな? うん、でも今のあなたは突っ走るしかないと思うよ、という印象で。 しばらくはそのまま迷わずがんばれ、突っ走れ〜という感じなのかな。 (すみません。 勝手を言います。 がんばってネ) この時期でそれを気づけたセンスは楽しみです。

マリウスは原田さん。
前回のアンジョがステキだったのに、
他の公演で見かけたら、戦時中の役なのに長髪で福福しい体形という???な役作りで(演出家が時代考証にこだわらない傾向もあった)、わたしのチェックリストからは落ちていたのですが、
マリウスは、きっちりとよかった。 この方は『レミ』だといい芝居をするのか?
上原アンジョと熱い友情を通わせていたし。
育くんのマリウスと、周囲との関係性の持ち方の体質というのか、見せ場がいちいち違うのが楽しい。 

 

今さんのジャペ。
下水道のあたりで、バルジャンに友情だか愛情だか、強い熱い感情を持て余し、人間としてぶつかり合うのがドラマチックでステキでした。
「受け入れられない相手を人間として受け入れようとする葛藤」は、「混乱」は、わたしたちにも身近な感情として、とても共感できました。 うーん、言葉で表現すると、他のキャストもそうでしょう?ってなっちゃうな。 どこがどう違うんだろう。 バルジャンと感情が絡まり、もぎ落ちた感じがよかったんだよなぁ。 
あとね、
そのあとで、橋の欄干にちゃんとコートの裾を残していてくれて、うれしかったのでした。
この作品をはじめて観たとき、息をのんだシーンのひとつだったので。

 

メンタルケアの勉強をはじめて、わたしが日々感じている、人間との向き合い方。 人間としての乗り越え方。 終着する場所。 
そのへんがバルジャンの人生のステージと静かにリンクして、新しい感動が、
やわらかく光をやどしているような、気もしたんだよ。

うん。 まぁ、いろんなオマケもあったけど、いい舞台、でした。