あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

いわしの頭

「頭がウニ」という言い方はもう死語かな?と書いたけど、若い役者さんのブログの中で発見してチョット安心。 もっとも、共演のおじさんから入れ知恵?されてる可能性もありますね。

    *

今日は、永六輔さんの『芸人 その世界』という本を読んでました。
文章にして5行前後の、この100年くらいの芸や芸人に関する膨大なエピソード集というか語録というか、そんな内容です。
この場合の「芸」には、歌舞伎、落語、芸者、風俗、見世物、演劇、芸能界、相撲などなどが含まれます。

驚くのは、
この100年の間に、日本人の道徳観がどれだけ変遷してるかということ。
いや、それは犯罪だから。 おいおい。
人を殴って怪我をさせて引退する横綱なんて、ヤワな話は出てきません。

色事と芸は切り離せないともあるけれど、
うーん。
粋な遊びの陰には、底なしの陰惨な泥沼が秘められているはずで。
そこから目を背けて粋だけを語ってても、どうかな、とか。
もっとも、
それを承知で無視して無理するから、粋になるともいえるわけで。

不具者見世物の禁止条例で見世物は薄っぺらになったとの一文もあり、それも一考ではあるけれど、やはり守らせなければいけない人権と平等はあるでしょうと思ったり。

 

物知りで熟慮する文化人が何をどういおうとも、それは個人の趣向に過ぎず、人間の流れは変えられないんだナ、という印象も。 
モノゴトはなるようにしかならず。 人間社会というモンスター。
言葉は無力だ。 

 

でもね。 興味深い話もたくさんあったよ。
帝国劇場の縁起棚の初代ご神体はイワシの頭であったとか。 いいねぇ。 大好きだ。 
「貧乏はするもんじゃありません。味わうもんです」とか。
「戦争は散らかすからいけません」とか。
寸劇の語源は「寸鉄人を刺す」だそうです。 人を刺し殺すほどのショートショート。 おっかねぇな。 わたしには無理。

 

芸人や役者の色気。 これは匂い立たせるものであると思っている。
色気がない表現者は存在しない。 
そして本人たちはともかく、
周囲はそのために何をどうするか、とスゴク考えなければいけないと思う。
劇作の本質は、たぶんその辺にある。

たくさんのエピソードを通して。 結局、行き着くところは、そこ。