2006/11/3 18・00〜 SePT
ここずっと、数々の観たい芝居を逃し続けていたけれど、美しい十三夜の夕方、ようやく劇場のひとつにたどり着く。 当日券で、ぽつりとわたしを待っていた席は前から7番目のド・センター。
観たかったのは、実は主演の山本クン。 TVで何回か見かけたとき、妙に不安げで頑なな様子が、あれ、大丈夫かな?と気になったので。 別に知り合いでもないんですけれど、親戚のおばちゃんあたりの心境か。
ブロードウェイの底辺から落ちこぼれそうな作曲家の日々。 30歳を目前に、かれは迷っている。 なんていうのか、観ていて、いろんな部分が妙に日常に投影されて。 共感できて。 (わたしは47ですけれど……) ロックはやっぱり肌に合うのだが、周囲の客席が岩のように身動きもしないので、リズムもとれないからだの芯がムズムズする。 東京という街のうわべは、よくも悪くも石鹸の匂いなんだな。
拍手したいのは、何よりも友人の役に黒人の役者さんを連れてきたことだ。 山本クンと並んで座っただけで、そこは人種の混じるNYの片隅になったし、片言の日本語もいいんだけれど、本当の言葉をしゃべりたいときは英語になり、それがやっぱりストレートに客席に届く。 日本語では伝わらない、描けないニュアンスというのは、あるのだ。
そして、誠実さ。 黒人だから誠実ってのは、差別発言か?
1曲、かれと山本クンが英語で歌うんだけれど、世界がぴったしとくる。 単純な内容なのに。 (ここだけ字幕が映るんだけれど、キュートな工夫がしてある)
二幕の泣きのシーン、山本クンの長科白。 ACLのポールの台詞以来の感動です。
こういう描き方、好みです。
気になったのは、S.S.の声が妙に若くて笑っちゃった(!)ことと、
最後の1曲。 いかにもアメリカのショー・ビズらしく、これ見よがしの結論をだしちゃっているのだけれど。
だいたい、多分だけれど、歌っている山本クン自身も、現実はこんなじゃないだろが!といいたいのを打ち消すかのように、叩きつけるかのように歌っている気もして。
今の日本は、不透明であやふやであること、何の結論は出せないこと、でもだからこそすべてを受け止め、抱きしめなくてはいけないことが、真実であり、実態なんだと思うよ。