あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

「TDV」を観た10 /教授の謎

TDV」で一番の謎(というか、突っ込みどころ)は、何故、ハンターであるはずの教授は、杭を打ち込まずに、みすみすヴァンパイアを見逃すのかということだと思う。テーブルに横たわるマグダ、棺おけで眠る伯爵と子息。

(付随して小さな謎。噛まれた痕として、「小さな穴がふたつ」。ヴァンパイアにも下あごがあるんだから、「よっつ」なんじゃない?)

教授の行動に誰もが「何故そこで退治しない?」と考えると思うし、一番悩んだのはたぶん、当の市村さんだと思うの。と、そこまで考えたら、教授の幼児性を押し出した役作りの意味が、見えてきたわけです。

なんにでも首を突っ込んで、能書きを垂れて、人格者ぶっているから気付きにくいけれど、教授ってほとんど自分では何もしていないんですよね。助手のアルフレート(ご苦労様)に、いちいち着替えを手伝ってもらい、本の山を見つけると本筋を忘れて(現実から目をそらして)没頭し、他人の手柄もあれは自分の理論だと主張する。「おまえは理論はそこそこだが、実践はてんでダメだ」と、アルフレートに文句を垂れるけれど、実は自分こそが、なのよね。

安全地帯では大威張りだけれど、ちょっと突っ込まれると逃げ腰になる。プチ批判ばかりがエラソーで、経験値と行動力はなし。でも他人の評価はほしい。なんて現代日本人の典型。なんでそれに気付かないで尊敬できるのか、ミーハー・アルフレート。

市村さんが気の毒なのは、教授をひとつの人格として表現するのは、ずいぶんむずかしいのでは?と思うのに、ごく自然にしかもチャーミングに演じてしまうから、「さすが芸達者ねえ」の一言で、終わってしまうこと。……でも、もしかしたら、それを望んでいるのかな?