あとりえあげん

劇作家・ミュージカル関連のコミックエッセイスト・多摩美校友会理事 活動ベースは三軒茶屋ですが八ヶ岳の別荘で在宅介護はじめました☆

[ブログ版] 世田谷区三軒茶屋で隠居してます。ときどき劇作家。HPはコチラ http://agen.web.fc2.com/

「TDV」を観た3 /遊びぬいた人たち

(写真は、自宅のPCです。個人で愉しむだけですので、お目こぼしください。 Tdvうははは。超美麗です)

なんでこんなに、この舞台に心動いたのだろうと思い、演出家の「難産の末に生まれた子どもは、元気だった」とのコメントについて考えている。

先月のミー・マイに続き、2作続けていい作品をつくりだした山田氏。以前に一度お見かけしたときは、言い訳好きでステキなおじさん(失礼。いえ、同年代なのですが)って印象だったので、なおさらスゴイなあと思うのかも。テーマを狙ってアイディアを絞りつめたって迫力は確かにあると思う。そして他のスタッフ全員を巻き込んで、実力以上のアイディアを、吐き出させたのかな、とか。そう、チェックポイントはたぶん、ここだ。関係した人たち全員が、微熱にうなされ、真剣に遊びぬいた方向・結果が、今、箱の中にある……。

最初のひとフレーズ。オケの音の深さに、わたしはまずトリハダがたった。何? 帝劇って、こんなに音よかったっけ? オケの人数? 指揮者? (パンフによると、スピーカーの増設) 音響も自然だ。(他の席でも、このクオリティがありますように)

次が、吹雪の森。やられた。特に珍しくない舞台空間なんだけれど、実はいつか自分が使いたいと漠然と思っていたイメージそのものを、見せられたというか、自分もその空間に巻き込まれていたことに、トリハダ。

CDで音楽だけは聞き込んでいたので、ああ、この歌はこういうシーンだったんだというのが楽しい。情報量が溢れている。えっとね、ひとりの人間が知覚できることより、ほんの少し多めの情報量でつくられているっていうのかな。それが「楽しい」って感覚になるのかもしれない。

舞台装置、1幕(森や宿屋)が終わった時点で、役者の動線が横移動だなと思った。帝劇は天井が高いから余計に物足りないって。吸血鬼には、やっぱ階段(理由はない)よねーと思っていたら、2幕(城)はのっけから、突き抜けるらせん階段。役者の動線もガゼン立体的になって。デザイナーのプレゼンが、聞えてきそうだった。全体にシンプルで、照明や科白が奥行きをつける。雰囲気のある設定だから、遊びやすいのかな。違和感なく、シーンが次々とつながるよう、つくりこまれて(考えられて)いる。 

あんぐりと大口をあけそうになったほど、わたしが好きなのは、「翼」の2シーンなのですが、デビルマンで育った日本人の発想だよね、あれ。もう、マイリマシタ。人間が吸血鬼に憧れる理由のひとつがよくわかったわ。

市村サンの良さというか、わたしが好きな部分が存分に発揮されてたのがうれしかったです。つくづく器用な方だなあ。さら〜っとふつ〜に難なく演ってらっしゃるけれど、実はあれ、かなりすごい技術ですよね。

アルフレード君、インタビューで自分だけは普通のキャラだからみたいな発言がありましたが、いいえ、君も十分「変なキャラ」ですって。一番、「変」じゃんと思ったのは、一度はいい雰囲気だったサラから冷たくされた直後に、結婚を熱くイメージできること。まあ、確かに、いい加減にしてヨとつき離しても、「今日は機嫌が悪いんだね」としか理解できない不気味なオトコというのは珍しくないんですけれど。で、5日のアルフは、役をつくりこんでいた。その熱心さが、初々しい。一瞬みせたリラックスモードが、2枚目サンだったので、おおっ。

唯一、普通な人間はシャガールの奥さん! (かの女の愛には、しんみりする)

あとね、特筆はダンス! タイトルロール(?)なんだから、あたりまえ? かっこいい。そしてこれも、大人数。(制作の懐具合を心配するというのも妙なことなんですが) 役者+歌 と ダンス・グループ を完全に分けていることも、迫力につながっているのかなあ。(クオリティが高いし、摩り替わっても違和感はないものだ)

最近のわたし、ホラ、グランジなロックがお気に入りだったりするから、音楽でも声でもダンスでも、芝居でも人間でも、ちょっと壊れた部分がとてもおもしろい。きちんとした実力に裏打ちされた正統派も、もちろん。……あ、この作品、両方を十分に持っているってことなのね。